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ひさかたの光のどけき

午後二時ごろ、ちかくのスーパーに買い物へと行こうと思い立つ。

お気に入りのチェックのシャツに、厚手のカーディガンを手に取ってから、はたと気が付いた。そういえば、今朝洗濯物をベランダに干した時、ちつとも寒さを感じなかった。

もう一度、ベランダへと出てみる。
ああ、やはり。そうとう温かい。
ベランダから見下ろした祖母の庭も、いよいよという顔で春の蕾を膨らませている。

カーディガンをクローゼットへと戻し、春用のカーキのジャケットをひっかけて外へと出た。

  〇

スーパーへの道のりはほんの五分。
このところ、散歩をするときは田んぼの畔を見る癖がついた。オオイヌノフグリ、ペンペン草、ホトケノザ。たんぽぽ、シロツメクサ、ヨモギにつくし。

野草に詳しいわけではないが、見たことのある小さな花たちが顔を出している。伸ばした葉に、春のひかりを受けて、うんと背伸びをするさまは、見惚れるくらいしなやかだ。

ひさかたの光のどけき春の日に。

百人一首に取られる、有名な歌を思い出す。
堤防の桜は、そろそろ蕾を開くころだろうか。先日の散歩で拾った桜の枝からは、一足はやい桜色が採れた。折れた枝からもらった色で、白シャツを淡い桜色に装う。

満開の頃に、桜色のシャツを着て花見にいこう。

しづ心なく花の散るらむ。

その様子を、桜に抱かれながら、ぼんやりと眺めるのもいいかもしれない。

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