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悪意の香りは心臓を毛羽立たせる

 人は疲れると、ときどき悪意を含ませた正論を振りかざす。
 そういった言葉は、発言はごくごく普通であっても、ちいさな棘がびっしりと生えていて、気持ちが悪くなる。吐き気をもよおすような、いやらしさがある。

 そうやって、「自分はイラついている」とアピールすることによって、他人を操ろうとする行為がとても嫌いだ。きっと好きな人などいないのだろうが。あらゆる行動に対して厚顔無恥にも「してやっている」という態度をする人間も好かない。もちつもたれつという言葉があるように、互いにしょうがない部分があって、その妥協点で皆生活を送っているのだ。だけれども、人は疲れたりイラついていたりすると、まるっとそれを無かったことにして、当たり散らすことがある。

 そういう、他人の苛立ちに、自分は多分人よりも敏感なのだと思う。言葉に棘を感じると、身体が縮こまったようになる。心拍数があがり、嘔吐感というか、車酔いをしたように頭がぐるぐるしてくるのだ。

 だいたい、そういった苛立ちは一過性で、すこし頭と身体を冷やせば相手も元に戻る。だからといって、私が受けた加害がなくなるわけでもない。

 同じことを、自分が他人にやっていないと言い切れないのが、なによりも嫌だ。自分の苛立ちは自分のもので、そこに第三者は関係ない。そのことを、どんな時も理解していたい。

 こういうの、男性よりも女性の方が敏感な気がする。結局、苛立ちが肉体言語と言う名の暴力に変化して、身体的加害を女性の方が受けやすいからなんだろうけど。ちがうかな。

 悪意の香りは、どんな言葉でも心臓を毛羽立たせる。悪意を向けられた時は、大きく深呼吸。私の心臓は私のもので、誰かの悪意で傷つけられていいものではないのだ。そのことを、忘れてはいけない。

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