「学生向け」起業家プログラム?愛知県,SoftBank主催の【STAPS】とは?
「学生起業家育成」って何か怪しいそう?どんな物好きが開催して,なぜやっているのか?と疑問に思う方もいるでしょう.
まだ一般に浸透していないであろう起業に関係したイベントが愛知県で行われています.学生向け起業家育成プログラムの「STAPS(STATION Ai Program for Students)」が2024.2.10-2024.3.17で開催される予定です.
名前からも分かる通り,学生の起業をサポートするようなイベントとなっています.既に数回行われてきていて,私は前回の参加者です.
このイベントは,全6回の講座で構成されています.内容は以下のようになっています.(期間中毎日参加するわけではない)
キックオフ/事業開発講座/市場機会講座など
仮説検証講座/アイデア検討会@豊田工業大学
中間報告会
先輩起業家講演会/事業ブラッシュアップ会
事業ブラッシュアップ会/3分ピッチ
最終ピッチ大会
今回はお世話になったのでただ単に「STAPS」の宣伝をしようかと思いましたが,それでは面白くないので「STAPSの背景」である愛知県やソフトバンクの取り組みについても書いていきたいと思います.
何で学生で起業をしようとしているのか,最近スタートアップについて聞いてよく分からないという方も見ていただけると幸いです.
私がSTAPSに参加したキッカケ
私は2023年の夏に開催された「STAPS」に参加しました.一応,大学で「しずはま起業部」というものを立ち上げに関わっていたりと起業に興味がありました.
しかし,実は浜松でも起業家プログラムというものは存在していて,そこにも参加していていました.起業家プログラムというものは,講座形式のものが多くなります.起業という幅広いくくりであるので,講義の内容も大きく被ります.これは過去に書いた「エフェクチュエーション」の記事の内容を薄く伸ばしたような内容が繰り広げられます.
「成功の再現性」はあまり高くないため,講座の方法をそのまま実行してもあまり意味はないと考えていました.よって,最初STAPSの話を聞いたとき「参加の目的」は正直「箔をつけるため」でした(研究や開発で時間がないので適当な参加でいいやと思っていました).
しかし,STAPSについて一応調べておいたところ,こんな内容が出てきました.
STAPSの背景:あいちスタートアップ・エコシステム形成
導入が長くなりましたが,本題です.長くなるので箇条書きで記載します.
愛知・名古屋及び浜松地域経済の持続的な成長のため、内閣府が募集した「スタートアップ・エコシステム拠点都市」に対し、2020年6月1日に拠点形成計画を提出し,「スタートアップ・エコシステム グローバル拠点都市」として認定
スタートアップの創出・誘致・展開を柱とする地域総合戦略「Aichi-Startup戦略」を策定 [2]
スタートアップの全成⻑ステージに対応した⽀援の提供とオープンイノベーションを推進する⽇本最⼤の中核⽀援拠点 「STATION AI」 を、ソフトバンク(株) が総⼒を挙げて整備・運営 [2]
愛知県の持つ海外の先進的なスタートアップ⽀援機関・⼤学との連携と、ソフトバンク(株)の世界的なネットワークを融合させ、世界有数 のスタートアップ・グローバルコミュニティを形成 [2]
STAPSは,STATION Ai 株式会社が開催している学生起業家育成プログラム [1]
ソフトバンク社内の起業制度では7千件のアイデアを出し17件を事業化した。こうした経験を生かせる [4]
STATION Aiという拠点は2024年に出来るため,それまでに入居起業やスタートアップに関わる人を増やしておく必要がある(でないと企画倒れすると思うので)
STAPSというプログラムの実態は,愛知県やソフトバンクが取り組んでいるスタートアップ構想の一環であり,非常に力を入れて取り組んでいる
社内起業制度の実績からも分かるように,スタートアップを立ち上げるノウハウというものはまだ確立できていないため,ノウハウの蓄積やエコシステムの醸成については挑戦段階であり,その過程を自分が経験出来る良い機会である
といったように,STATION AI(STAPS含む)はスタートアップ関係の大きな取り組みの渦中にあり,なかなか熱いフロンティアだということです.
起業(スタートアップ)の現状:スタートアップ育成5か年計画
以上がSTAPSの背景なので,ここから参加のメリットについて書こうと思ったのですが,その前に簡単に私が起業に参加しようと思ったキッカケを書こうと思います.
実は,起業に関して盛り上がっているのは愛知だけではありません.実は日本全体で起きています(参考文献 [11]の日本総研資料から引用).
最初はこのような状況になっているとは全く知らずにひたすら衛星開発をしていたのですが(衛星開発研究室の学生なので),以下の計画を岸田総理が発表している記事を見ました.
それが,私が起業プログラムに参加しようと思ったキッカケでもあります「スタートアップ育成5か年計画」というものです.以下の三本柱で成り立っています.
スタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築
スタートアップのための資金供給の強化と出口戦略の多様化
オープンイノベーションの推進
これの細かい内容はおいておいて,この計画は大学と非常に関係しています.例えば,参考文献[5]から,
というような現状となっています.このように大学からの起業がやりやすくなっているような現状があります.
私は,①金銭面,②人との交流,③起業部を作りスタートアップのノウハウ醸成を目的に起業関係に関わり始めました.大学生が研究を活かしたり,身に着けた技術を向上させるためには起業はもってこいの場所であると考えてました.この良い環境を活かそうと思い起業関係のことを始めました.
STAPSへの参加の旨味
さて,ここまで書いたので,なんとなくSTAPSに参加するとよい気がするというのは感じられたのではないかと思いますが,まとめます.私が思う参加のメリットは5つあります.
今熱い起業の現場に関われる
社会人と話せる
無料で壁打ちをしてもらえる(ソフトバンク社員に)
アントレプレナー教育のノウハウを知ることが出来る
今後に繋がる
それぞれ簡単に見ておきます.
1. 今熱い起業の現場に関われる
起業の背景で紹介した通り,日本が現在進行形で取り組んでいるものがスタートアップ事業です.しかも「愛知をスタートアップの最大拠点」にしようとしている大物たちと関わることが出来ます.
STAPSは無料で参加することが出来(審査はありますが),入り口としては非常に優しいものだと思います.ちなみに講座や発表は休日に行ってくれることが多いので研究や自分のことをしていてもある程度参加しやすいようにしてくれています.
2. 社会人と話せる
これは学生にとっては大きなメリットだと思います.私は大学院の2年なので就活や企業の方とのやり取りなどで社会人の方とやり取りすることは少なくないですが,普通に講義を受けて課題をやって勉強して寝るだけの大学生(偏見)には社会人と触れ合う機会は少ないでしょう.
しかも愛知県庁の方やソフトバンクの社員と話せる機会はなかなかないと思います.愛知県庁の柴山さんなど,調べたら出てくる方々とも話す機会があります.
また先輩起業家(といっても先に起業している人という意味で先輩でもなんでもありませんが)とも話すことが出来ます.面白い方が多かったです.その方々と同じ道を歩いても成功はしないだろうと思いましたが,実績がある方の意見というのは貴重です.一次情報として得られるのは良い経験でしょう.
この意味ではプログラムの講座よりも,「アイデアの壁打ち」に価値があるように感じています.人からのフィードバックは非常に貴重なものですし.
3.無料で壁打ちをしてもらえる(ソフトバンク社員に)
既に書いてしまいましたが,壁打ちは非常に良い機会です.確か,全4回程度の壁打ちをしてもらえます.
新規事業部の方などもいて,学びを得られます.(深く調べていないですが,壁打ちの相手は自分の案に近い専門の方がつくようです.)
あとは仮説検証について様々な知見を得ることが出来ます.仮説検証のKPIも設定されています(よくあるアンケートを用いた卒論を書いている気分になりました).
4. アントレプレナー教育のノウハウを知ることが出来る
あまり書くべきではないかもしれませんが,様々な企業や自治体がスタートアップを輩出するノウハウをお金を出して獲得しているフェーズのように感じます.STAPSもその段階にいるように感じます.
しかし,逆にいうとほかのチームの取り組みを見ていると,STAPSがどのようにメンタリングしていてどのチームが上手く行ったのかなどを見れる機会にもなります.
今後この知識というのは重要なものになると思いますので,このみんなが迷っているフェーズを見ておくというのは価値があると思います.
5. 今後に繋がる
「経験は今後に活きます」という話でなく,実際にいろんな未来があるようです.すぐ思いつくのはスタートアップを立ち上げるという未来でしょうか.STAPSで一番良い賞を貰った川村君は会社が立ち上がっています.
私自身がSTAPSでリーダをしていたチームから派生したアイデア「CUCULI」は,次のビジネスコンテストの優勝候補にもなっています.(システム開発中,協力企業の方と邁進中)
私がチームメンバーとして出た「cognuren」は,STAPSでは「Tongali賞」を貰いました.
そして,この褒章として参加したアイデアピッチコンテストでは「三井物産賞」を貰いました!
現在はこちらのスタートアップで,私は「CTO」としても活動しています!
こんな感じで起業には繋がりますね.他にも紹介したい方たちが多いですが,割愛.
他にもSTATION Aiのコミュニティアソシエイトになった子もいます.何をやっているのかは分かっていませんが,いろんな経験を出来ることは間違いないでしょう.北川さんは1年生ですが,素晴らしい活躍ぶりでした.アキコマバイトに関する内容で今も活躍しています。STAPS参加中で、参加者のほとんどの時間割を集めていたのではないでしょうか(一方で私は大学院生になって腰が重くなっていることを実感すると共に空きコマいう概念を忘れかけていたことに気づきました)。
他にも企業のインターンに行ったなどの話も聞きます.
以上がメリットです.メリットと書きましたが,結局自分でどれだけ行動できるかが鍵です.ただ参加しただけでは何も得られないかもしれません.(講義だけの内容なら私のエフェクチュエーションの記事を読んでいた方が効率がいいかもしれません.)
デメリットも添えて
良い点ばかり挙げているとよい記事にはならないと思いますので,デメリットも.個人的な意見ですので悪しからず.
技術について聞ける環境にない
エンジニアが少なくて,プロトタイプ作りにくい
愛知県でやる意味はない
ソフトバンクの技術も参考にできない
ハードウェア系のものはほぼないし,サポートできるとは思わない
審査基準が曖昧
技術寄りのことは学べないと思った方が良いです.応用先を考えるキッカケとして捉えた方が良いでしょう.(Tongaliが管理している設備があるそうなので,ハードウェア系でもそちらを利用できれば価値あるかも)
後はビジネスコンテストの少し悪いところもあると思っていますのでそのあたりですかね.
後は結局まだ東京でスタートアップした方が環境が良いので,そちらに行ってしまうのも芳しくないですね.
こうやってみるとアントレプレナー教育としてのデメリットというよりは詳細についてのデメリットが多いですね.この辺はやりたいことによって変わりそうです.
最後に
長々とSTAPSとその周辺について書いてきました.
宣伝するだけなら下記リンクをXに貼ればよいだけなのですが,愛知県の取り組みや大学生がスタートアップに取り組みやすい現状などを広めたかったので記事にしてみました.
さて,既に事前説明会は2023.12.19に行われました.そして,この記事を投稿しているのは2023.12.20です.遅れて申し訳ないです.
しかし,私も説明会に参加していないので問題ないと思います.以下リンクから見てみてください.
何か個人的に聞きたいことなどがございましたら,以下のメールまでご連絡ください.
(まだ学部1年や2年なら部活のような感じで参加してみるとよいかもしれませんね.)
参考文献
[1] STATION Ai, ”STAPS”,
[2] 名古屋市 経済局 イノベーション推進部 スタートアップ⽀援室,”スタートアップ・エコシステム 拠点都市の取り組みと成果”,
https://www8.cao.go.jp/cstp/openinnovation/ecosystem/central/01-1_nagoya.pdf
[3] 内閣府,”拠点形成計画進捗報告資料【愛知・名古屋・浜松市】”,
[4] 日本経済新聞,”愛知の新興拠点 ソフトバンク幹部「ノウハウ全国展開」”,
[5] 文部科学省,”文部科学省におけるスタートアップ支援施策”,
[6] 愛知県,”愛知県スタートアップ支援拠点「ステーションAi」整備等事業に関する「基本的考え方」の公表について”,
[7] SoftBank,”愛知県とソフトバンクが愛知県スタートアップ支援拠点整備等事業の基本協定を締結”,
[8] 愛知県経済産業局,”Aichi-Startup戦略 ー あいちスタートアップ・エコシステム構築に向けて”,
[9] 愛知県,”愛知県スタートアップ支援拠点 「STATION Ai」”,
https://www8.cao.go.jp/cstp/openinnovation/ecosystem/central/04-1_aichi.pdf
[10] SoftBank,”愛知県スタートアップ支援拠点整備等事業 事業概要”,
https://www.softbank.jp/corp/set/data/news/conference/pdf/material/20210907_01.pdf
[11] 日本総研,”地方のスタートアップ・エコシステムの現状と課題
~スタートアップ・エコシステムから、地域を進化させるイノベーション・エコシステムへの転換~”,https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=103894
[12] 日本総研,”「スタートアップ育成5か年計画」への期待とスタートアップ創出・育成に求められるさらなる支援”,
エフェクチュエーションについては以下参照