つま先立ちをしたら、自閉症?それよりも見ておくべきこと。
こんにちは。こども発達LABO.のにしむらたけし(理学療法士)です。
私が運営している未就学児専門の療育事業所(発達支援ゆず)や、オンライン発達相談室の中で、保護者の方から体の心配ごとしてご相談いただくことの一つに、「頻繁につま先立ちをするのですが、自閉症なのでしょうか?」というものがあります。
頻繁に、というのがどの程度を指すのか、というのは置いておいて、結論から言うと「つま先立ちをするからと言って自閉症スペクトラムだ、とは決められません。ですが、自閉症スペクトラムのお子さんで、つま先立ちをよくする子どもは比較的よく目にします」が答えです。
それでは以下、つま先立ちをする理由、つま先立ちをしているからといって自閉症スペクトラムだとは言えない理由、見ておくべきポイントなどについて深堀りしたいと思います。
つま先立ちをする理由として考えられること
もちろん、つま先立ちをする理由としては、いくつか考えられます。
つま先に入る(体重がかかる)刺激を楽しんでいる(心地よい)。
足の裏に過敏性(触覚過敏)があるので、足の裏がつかないように浮かせている。
上記2つの理由でつま先立ちをしているうちに、その体の使い方が習慣化してしまった。
他にもあるかもしれませんが、上記に挙げたものが最も多い理由でしょう。
「つま先だちをよくしている=自閉症スペクトラム」とは言えない理由
さて、こういった理由でつま先立ちをすると仮定して、「それが自閉症スペクトラムの症状なのかどうか?」といったことが気になられると思います。
自閉症スペクトラムの診断は「診断基準」に基づいて結論付けられます。
相互関係の障害が持続する、コミュニケーションや対人関係の障害がある、などの項目に当てはまる場合に確定診断されます。
診断基準の中に、「つま先立ちをよくする」という項目はありません。
ただ、「感覚入力に対する敏感性あるいは鈍感性」という項目はあるので、上で挙げた「足の裏の感覚がとても過敏で、足の裏を着けたくないので、つま先立ちをしている(しかもそれが継続する)」場合は、感覚入力に対する過敏性」と判断されることがあるかもしれません。
診断は、あくまでも「診断基準に基づき」「医師が総合的に判断する」ものなので、「つま先立ちをするから、自閉症スペクトラムだ」と結論付けられることはないでしょう。
つま先立ちが気になったら見ておくべきポイントと、しておくと良いこと
そのためつま先立ちをしているので、もしかしたら自閉症?ということが気になったら、「きっとそうだ」と決めつけるのではなく、その他の特徴があるかどうかを見るようにしましょう。
例えば、足の裏以外にも過敏性(特定の素材の服が嫌で全く着られないなど)の有無、コミュニケーションの有無、年齢相応の対人スキル、こだわりの強さ、などです。
これらをチェックしてみて、「どうしても気になる」ということであれば、小児神経外来や発達外来のある病院で相談されるのが良いと思います。
余談ですが、診断がついたからといってお子さんへの手立てが変わるものではありませんので、診断の有無は二の次でいいと思います。
最も大事なことは診断の有無ではなく、「困りごとに対する具体的な手立てを考えてあげること」です。
つま先立ちでいうと、つま先立ちをすることよりも、「長い期間つま先立ちをしていると、足首の関節が硬くなったり、ふくらはぎの筋肉が硬くなったりするリスクがあるので、それを予防しておく」ことのほうが大事です。
具体的な方法としては、時々足首の関節を大人が動かして硬くなっていないか確認する、ふくらはぎのストレッチやマッサージをしてあげる、などです。
こういった方法を理学療法士などの専門家から学び、時々実践してあげることで、将来の問題(二次障害)を予防しやすくなりますし、何より大人(保護者の方)が「少し前より筋肉の硬さがきつくなってきているようだ」など、お子さんの小さな変化も見逃さずに、適切な対処につなげることができます。
身近に相談できる専門家がいない場合は、私たちが実施している「オンライン相談室」をご利用ください。
まとめ
■つま先立ちをしているからといって、それだけで「自閉症スペクトラムである」とは言えません。
■自閉症スペクトラムかどうかは、医師が他の事象を踏まえた上で診断基準に基づき判断します。
■つま先立ちをしているから自閉症スペクトラムだと決めつけるのではなく、その他の特徴があるかどうかをチェックしてみてください。複数当てはまるようなら、専門機関に相談してみましょう。
■つま先だちによる筋肉の疲労や関節の硬さなど、二次障害を予防する取り組みを行っていきましょう。