ただ力を抜くだけでいい
「シャバアーサナ(屍のポーズ)」という、ただ横になり、全身の力を抜くだけのヨガアーサナがあります。
「このアーサナこそが究極であり、このアーサナのために全てのアーサナがある」という表現をする人もいるほど、重要で効果の高いポーズです。
ただ力を抜くだけでいいのですが、そこに雄大な奥深さがあります。
私自身も、ヨガを始めたころレッスンの最後のシャバアーサナで人生ではじめて肉体と魂が離れる感覚を体験し、それをきっかけにヨガにのめり込んでいきました。
人は誰しも、人生を歩む中で悲しみや罪悪感、恐怖などを経験しますが、その記憶は身体の強張りや滞りとして残っているものです。
頭では忘れているけど身体が覚えている記憶というのもたくさんあって、それらは一度筋肉を緊張させ、その後ゆるめることではじめて手放すことができます。
緊張と弛緩は、セットで意味を成すようです。
私はこの法則は日常生活にも当てはまるような気がしていて、行動は余白があってこそ意味を持つと思っています。
ただ漫然と動き続けるのではなく、行動と行動の間に余白を取ってそこに耳を澄ませる。
私の場合はそうすることで周囲との調和が自然と取れ、あらゆることがスムーズに進みだしました。
「余白」「脱力」「静寂」といった「無い」方の世界へ深く入っていく感覚が養われることで、「行動」「創造」「成長」といった目に見える世界で味わえる果実の質が上がっていくんじゃないかと思うんです。
これは、プロセスにも結果にも喜びが流れ込んでくる世界観なので、ただ悠々と歩んでいるだけで自然と発展し、周りにも豊かな世界が広がっていきます。
脇目を振らずがむしゃらに頑張ることもそれはそれで楽しいものですが、少し余白のできたときにはこんなアイデアもあることを思い出していただけたらうれしいです。
Cover photo by Florian Olivo