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Weekly AR Review vol.5|9月に登場したARユースケースを振り返り!

2019年9月に報じられたARニュースの中から、個人的に気になったARユースケースを紹介したいと思います。

今回のテーマは『文化』『スポーツ』『ブランド』

それぞれの分野でARの活用が検討され、話題を集めるユースケースが登場し始めています。

それではいきましょう!

KDDIの「バーチャル渋谷」プロジェクト

文化系ARプロジェクトの中でも注目を浴びたのが、KDDIの『渋谷エンタメテック推進プロジェクト』

”「5G」 時代を見据え「渋谷の街をエンターテインメントとテクノロジーでアップデートする」”

、と銘打たれたこのプロジェクトではVPS (Visual Positioning Service)と共に、AR技術が活用されています。

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Source: KDDI

イメージ画像では、渋谷のスクランブル交差点に様々なARオブジェクトが出現し、空間を鮮やかに、賑やかに彩っています。

今回のプロジェクトは『創造文化都市』を目指す渋谷区からのサポートのもと、『テクノロジー×街づくり』で渋谷の新たな一面を生み出す試みです。このプロジェクトを通して、ビジネスモデルの構築だけでなく、クリエーターやアーティストを巻き込んで、渋谷の街に新しい文化が芽生えようとしているのかもしれません。

個人的にARは『文化』や『街づくり』と相性がいいと考えています。

例えば、今年の夏に話題を集めたAppleの『[AR]Tウォーク‎』では街を歩く中でARアート作品との出会いが演出され、普段見ている風景がARで彩られました。街の中にARアートを埋め込んでいくことで、新しい文化が芽吹いてくるのかもしれません。

また、僕が所属するMESONでも、博報堂と神戸市の協力のもと『AR City in Kobe』というプロダクトを展示していました。ARクラウドを使い、複数人で未来の神戸の街を創るというものです。

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Source: 078

KDDIの『渋谷エンタメテック推進プロジェクト』はAppleの『[AR]Tウォーク‎』とMESONの『AR City in Kobe』を掛け合わせたような、ARの分野でアートと街づくりの両方に取り組む試みだと思います。

また、今回のKDDIのプロジェクトでは『文化』がキーワードとして上がっています。ARは今の所「先端テクノロジー」としてイメージが強いですが、今後ARを取り入れた文化、そしてリアルとデジタルにまたがった文化圏が街づくりの文脈で生まれてくるのかもしれません。

その時に、渋谷の街がAR文化の発信地となり、日常にAR空間が広がっていくことを思うと楽しみですね。

『AR×文化』のユースケースで、もう一本ご紹介したいと思います。

AR三兄弟による「メディア芸術×文化資源」

業界では知らない人はいないAR開発ユニットAR三兄弟が製作したAR×文化コンテンツ『屏風から家光を探せ,からの,取り出す江戸時代』が羽田空港で展示されていました。

文化庁の支援のもと行われている新事業「空港等におけるメディア芸術日本文化発信事業」のプロジェクト『メディア芸術×文化資源 分散型ミュージアム』の一環で開催されました。

今回の体験は、「江戸図屏風」から切り取られた9枚の絵の中に隠れた徳川家光を探し出すというゲームで、クリアすることで江戸時代をまるごとARで取り出せる、というものです。

この取り組みはARの文脈だけでなく、文化資源の文脈からも興味深いものとなっています。歴史や文化は基本に無形もしくは保存されているために、これまで共有することが難しく、孤立しがちな存在でした。

このことについて、プレスリリース内のコメントでAR三兄弟さんはこう言っています。

”経験を重ねたうえで初めて明らかとなる学術的な根拠を,一瞬にして空港利用客に理解して持ち帰ってもらえるような仕組みを開発できたら,夢のようではないか。これが,この企画の骨格となった思いです。”

可視化することによって理解を促進させることはARを活用する大きなメリットです。今回はそれに加え、『歴史』というコンテンツに活かすことで、社会的意義も生み出しています。

近年、こういった文化資源をデジタルで保存し、親しみやすくする試みが行われるようになりました。

例えば、⬇️は建築家・菊竹清訓氏が設計したメタボリズム建築の代表作『旧都城市民会館』が解体されるにあたり、3D点群データとして記録し、ARとして復元する試みです。このARデータの作成にあたりホロラボ所属の藤原龍さんが担当なされました。

⬇️のニュースは、1945年に運行を停止した沖縄の軽便鉄道「与那原線」の終点駅『与那原駅』のかつての風景をARで再現するプロジェクトです。

こういった歴史的文化財がデジタルで保存され、ARで身近に復元されることは『これからの文化資源のあり方』を考える上で重要になってくると思います。

また、『街全体をスキャンして現在の状態でデジタルに保存し、数年後にその風景をそのまま取り出す』なんてことが、文化資源の未来の形として提唱されてくるのかもしれません。

『AR×文化』のフィールドはこれからどんどん広がりそうですね。

NFL×Snapchatが話題を呼んだARフィルター

アメリカのアメリカンフットボールリーグNFLの記念すべき100シーズン目の開幕戦、シカゴベアーズ対グリーンベイ・パッカーズの試合にARを活用した施策が導入されました。

NFLにスナップチャットを提供するSnap Inc.が協力し、特別なARフィルターが作られました。シカゴ周辺にいるスナップチャットユーザーにSnapchatのARフィルターが配布され、NFL100シーズン目のロゴにスマホをかざすと、ARでベアーズ対パッカーズの過去の試合のハイライトが楽しめるようになっています。

NFLがこのような施策をしたのは、これが初めてではありません。
これまでにも実験的にSnap協力のもとAR施策を打ち出しており、昨シーズンでは一週間に200万回もの利用者がいました。現在は一部の試合でしか導入されていませんが、これからビッグマッチ以外にも人気のある試合に導入していくようです。昨年、Snapとの2年間の契約延長も報じられており、これから徐々にSnapchatの活用の機会を増やしていくと予想されています。

この他にも、NFLは過去にAR導入を試みていました。
それがこちら⬇️。

Source:Windows Central

この動画では、将来のアメフトの楽しみ方が提案されており、Hololensを装着することで、自宅でも臨場感のある試合を楽しめるものです。またARの特徴を活かして、多視点視聴やデジタルでの情報提示などを可能にしています。

NFLがこれからARをどう活用していくのか?どうアメフトの観戦を変えていくのか?楽しみですね!

PUMA、NY基幹店でARを導入

小売業においてもARの導入が進められています。

なかでも取り上げたいニュースがスポーツウェアブランドPUMAが新しく開店したニューヨークの旗艦店で導入したARアプリです。

WebARを通して体験するこのアプリは、店舗内の二つのマーカーを認識させることで始まります。店内に配置されたマーカーやタグを認識させることで、PUMAのマスコットキャラクターが登場し、店内案内や商品紹介します。今回はそれだけでなく、バスケットボール用品の新ライナップのプロモーションも兼ねたものになっているようです。

今回の事例では英ロンドンのクリエイティブスタジオAlternative GeniusとPUMAとのコラボによって生まれ、技術的にはZapparのAR開発ツールが使われました。

*Zapparはロンドン発のスタートアップで、AR、VR、MR開発に特化させた開発プラットフォーム「ZapWorks」を提供しています。技術者でなくても簡単に開発を行えることが特徴です。

最近、こういったARをブランド戦略に活かした事例が増えてきました。

例えば、ファッションブランドGucciはAR試着アプリを開発するベラルーシ発のスタートアップWannabyとコラボをし、自社のブランド戦略にAR試着を導入しています。また、ECサイトとも連携をしているので、スムーズな購買体験も実現しています。

このWannabyのアプリWanna Kicksは他にもAdidasやNike、Allbirdsとコラボをしています。バーチャルプロモーションやバーチャル試着など、ARで今までの購入体験をアップデートすることはこれからの一つの潮流となってきそうです。

PUMAのシニア・バイス・プレジデントRuss Kahn氏はコメントでこう述べています。

"Upon entering our store, customers receive richer, dynamic engagement with both our Puma brand and our individual products."

ARで店舗体験をリッチにし、ブランドと製品とのコミュニケーションを活性化することで、買い物体験にイノベーションが起ころうとしています。

これからPUMAやGucciのようにARを買い物体験に導入する事例が増えると、私たちの買い物への意識や店舗の認識が変わってくるのかも、ですね。

どんどん登場するARユースケース

こういったユースケースが続々登場することで、AR業界だけでなく、一般にもARを普及させる意味で非常に良い兆しだと思います。

特に、今回のテーマ、『文化』『スポーツ』『ブランド』は社会との繋がりも強く、広く浸透していきそうです。業界内だけで収まるのではなく、多くの人を巻き込んで盛り上げていきたいですね。

これからも新しいユースケースが報道されたら、その都度キャッチアップしていきます!

最後まで読んで頂きありがとうございます。
来週にアップロード予定の『Weekly AR Review vol.6』も宜しくお願いします。
*次回から10月のニュースを取り上げていきます!

僕が所属しているMESONは「Spatial Computing時代のユースケースとUXをつくる」をテーマに掲げて活動しています。様々なアセットを持つパートナー企業と組むことによってユニークなARサービスを提供しています。
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