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付き合ってないけど、彼とさよならをするまでの話。1
どうしようもなく好きだった人がいた。
その人とは付き合う関係にはなれなくて、私がただただ好きだった。
友達以上恋人未満...
恋人同士にはなれない曖昧な関係だった。
お互い都合が良くて、居心地のいい関係なんて長続きするはずなく終わりは必ずくる。
だけど、そんな風なダメな恋愛だったのに私にとっては、大切な恋愛だった。
きっと誰かに言ったら笑われてしまうかもしれない。
付き合ってもいないのに、別れるっておかしな話だけどその彼と出会ってさよならするまでを書きたい。
◇◇◇
20代彼氏がいない頃に私達は出会った。
その日私は24歳の誕生日だった。
仲良い先輩が私にも声をかけてくれてその飲み会に彼はいた。
「誕生日の日に何も予定なくて飲み会来ちゃいました〜!よろしくお願いします!あはは〜」
と明るく自虐っぽく言う私は、なんだか惨めで恥ずかしい女だな、、と思った。
そんな風に思っていたら、私の斜め前に座っていた彼が、こう言った。
「そうなんですか!実は俺、昨日誕生日だったんですよ〜一日違い!俺なんて昨日新幹線の中で誕生日迎えました。笑」
と笑って私に言ってくれた。
誕生日なんて、別になんてことない。
今日楽しいなら別にいいじゃん?と笑顔で私を励ましてくれるような人だった。
飲み会の後に彼と番号を交換して、なんとなく連絡を取り合って二人で初めて会う夜。
久しぶりに誰かに会う日が楽しみだった。
緊張してる自分もなんだか新鮮で、着る服も気合いを入れて早めに待ち合わせ場所に行った。
コンビニで待っている時、何気なく雑誌を読みながら時間を気にする。
後ろから
「、、あいさん?」と声をかけられた。
「あ、お疲れ様!!」私は一瞬ドキっとしたけど、彼の顔見て安心した。
ちゃんと来てくれた。嬉しかった。
2人で駅前を歩いて、ここ良さそうだね〜。と話しながら寄った焼き鳥の店。
カウンターしか空いてなくて、少し狭かったけど、ちょこんと2人で座って飲んだ。
「あ〜うま!」
2人で適当に焼き鳥を頼んでビールやレモンサワーを飲んだ。
彼のことがもっと知りたい自分がいた。
なんだろう、、趣味は何?どこに住んでた?大学時代何してた?
色々聞きたい。共通点が欲しい。
そんな風に思って聞いたのが好きな音楽だった。
「え〜。色々聞くけどなんだろう。」
iPhoneの中にある曲欄を見ながら話す。
「まあ、高校の時から好きなアーティストはaikoなんだよね〜」
と言って見せてくれた昔の曲がずらっと並んだ画面。
「え、、!!!まじで。」と思わず声が大きくなってしまった。
彼は不思議な顔で私を見る。
「わ、私もaikoが高校の頃から大好きなん!!この前のライブにも行ったし、、ずっとaiko友達欲しいなって思っていて、めっちゃ嬉しい!」と早口で話してしまった。
本当にこんなことってある?
めっちゃ嬉しくてテンションが上がって、なんかこの前会ったばかりとは思えなくて。
彼と一緒のアーティストが好きで、誕生日が一日違いで距離が一気に縮んだ気がして嬉しかった。
その後はaikoの話で盛り上がった。
どのくらい昔の曲を知っているか、ライブにはどこに行ったとか、、沢山話した。
帰り際、彼はこう言った。
「あいさんに昔のアルバムとDVD貸してあげるよ!家近いし寄って!」
私は少し戸惑ったけど
「うん。借りに行きたい。」
と勢いに任せて一緒に彼のマンションへ行った。
彼の部屋に着たらさっきまで話していたのに、なんだかまた緊張してきた。
「これね〜。返すのはいつでもいいからね〜」
「わあ、ありがとう!ずっと見たかったし嬉しい。」
ベッドの横に座って彼の本棚をぼーっと見ていたら急に彼が近づいてきた。
「今日は楽しかった。ありがとう。」
と彼にキスをされた。
急すぎて、、びっくりして何も言えずに頷いた。
ここにずっと居たら流されてしまうかも、、
なんとなくダメな気がした。
「じゃあ、、ありがとうね!
私帰るわ。また連絡するね!」と伝えて部屋を出ていった。
心臓がドキドキする。嬉しいことが多いとその分不安になる。
何で急にキスしたんだろう。私のことどう思っているの?
わからないことが多くて、だけど私は彼にどんどん惹かれていく。
自分のベッドの上で横になって考える。
次はいつ会えるのかな。
これが、彼との始まりだった。