付き合ってないけど、彼とさよならをするまでの話。2
↑第一話はこちらからお読みください。↑
◇◇◇
出会った頃のじめじめとした梅雨が終わり、空が青く透き通るような初夏になってきた頃
彼からラインが来た。
「お疲れ様〜
良かったら今週末会えないかな?
aikoのライブ大阪まで行ってきてさ!
あいさんにお土産渡したい!」
「土曜日の夜空いてるよ!嬉しいな。
お土産もありがとう」
と返信をして次会う約束をした。
彼に会える日が決まったら、さっきまでやる気が出なかった仕事も少し捗ったように感じた。
仕事が終わった帰り道、
ぼんやりと彼のことを考える。
私にお土産を買ってくれるってことは少し期待してもいいんだよね...
ただずっと心の中ではもやもやとした感情があった。
あの後彼からは何も言われず今日まで過ごしてきた。
あの日のキスのことずっと忘れられない。
どうしよう。会ったら聞いてみるべきなのか。
好きな気持ちがある以上このまま何もなかったことにしたくない。
もしかしたら彼も私と一緒の気持ちかもしれない...
僅かな期待を胸に私は次会った時、彼に自分の気持ちを伝えたいと思った。
土曜日の夜、駅前のコンビニで待ち合わせをした。
会うまでの時間が一番緊張する。
好きな人に会う為に精一杯可愛くして楽しみなはずなのに、どこか不安で自信がない。
何度も自分の姿を鏡で見て大丈夫。と自分に言い聞かせる。
「あいさん、久しぶり!」
と彼の声が聞こえた。
「お疲れ様〜良かった。久しぶりだね」
彼の変わらない笑顔見て、さっきまで落ち着かなかった心もようやく落ち着いたように思えた。
「どこ行こうかね〜ちょっと歩いてお店みてみよっか!」
私達は歩きながら、個室の居酒屋を見つけて入った。
お疲れ様〜乾杯!と二人でビールを飲んで他愛のない話で盛り上がる。
「そうそう、あいさんにお土産渡したかったの。」
これ、と渡してくれたaikoのライブタオルだった。
「わ〜!本当に買ってきてくれたんだね。嬉しい!ありがとうね!」
女の子が描いてあるタオルを広げた。
「今回は大阪でROCKがあったんだけど、一人で参戦してきたんだ。めっちゃ激しかった!」と、楽しそうに語っていた彼。
その話を私も嬉しそうに聞いた。
「今度さ、一緒にライブ行けたらいいよね〜」
「それ、絶対楽しい!チケット当たったら一緒に行こう!」
笑いながらそんな約束を交わした私達。
先の約束があるとなんだかこの先もずっと一緒にいれるような気がして
私達ってもうすぐ付き合うんじゃない?と想像が膨らんでしまう。
そんな確信もないのに、、
時間はあっという間に過ぎて次どうする?なんて話ながらお店を出た時。
「ちょっとウチ寄って行く?まだ時間あるなら話そうよ〜」
私もまだ一緒に居たい気持ちがあったし、話したいこともまだ話せていない。
「うん、そうだね!じゃあ、またちょっとお邪魔しようかな。」
そう言って、マンションに向かう彼の少し後ろについて歩いた。
「あんまり片付いてなくてごめん!適当に座っていいからね〜」
「ありがとう。お邪魔します」
私が以前来た時と同じ場所に座っていると
「またそこ座ってる〜。お気に入りの場所?」と少しからかうように笑うから
「そうだよ〜この場所も部屋も好きだな。」
と答えてしまう。
「あいさんの好きな場所ができて嬉しいな。」
と彼も少し恥ずかしそうに言っていた。
彼と居ると素直になってる自分がいる。
私の素直な気持ちをただ単純に伝えてみたいと思った。
それが、何かに繋がらなくてもただ今は言ってみたかった。
「あのさ、、この前も今日もすごく楽しかったんだよね。」
「うん、俺もだよ!」
「...今日もライブのお土産買ってくれたこともめっちゃ嬉しかった。本当にありがとう。」
「これからどうゆう関係で接したらいいかな、、この前のこともずっと気になってるんだよ。」
敢えてキスとは言わなかった。
なんとなく私が何を言いたいか気付いて欲しかった。
「ああ、、!そうだよね。でも俺たち出会ったばかりだし、もっとお互い知りたいよね。」
「俺はこれからもずっとあいさんと仲良くしたいって思ってるよ!」
そう言われた私は一瞬沈黙した。
どう言い返したらいいかわからなくなってしまった。
何か言わなきゃ、、
「そ、そうだよね。うちら友達だもんね。
じゃあ、この前のキスもなかったことにする。わかった。」
と動揺を隠しながら独り言のようにカバンを持って立ちあがろうとした。
その瞬間、彼がいきなり私を引き止めるように抱きしめてきた。
「そうだけど、、あいさんと離れたくない。これから会わないとか言わないで。」
「お土産だってあいさんのこと思って買ってきたし、、一緒にライブだって行きたいし、楽しいこともっとしたい。離れたくない。」
「...私だって一緒にいたいよ。でも、、もう何でそんなこと言うの。ずるいよ、、」
「ごめんね。でもこれからも一緒にいてほしい。」
と私を見つめて彼は言う。
そんな風に言われたら「わかった。」と言うしかなかった。
完全にはぐらかされたと思う。
家に帰ってからも彼の言葉がグルグルと纏わりつく。
それでも自分の気持ちを押し通したら何か変わったのだろうか。
でも、できなかった。
私達は恋人ではなく友達として、一緒にいることを選択した。
好きだから。
ただ単純に一緒にいたいし、少しでも彼の隣にいたい。
曖昧な関係だけど今はまださよならを言いたくない。
一緒にいること選んだ夜だった。