おじさん交換日記 グルメ風雲録編 その5
【ハラダ・アキヒロ】
出されたものを美味しく食べるのが本当の食通じゃねえか?
拝啓
などという堅苦しい挨拶から始めさせていただこう。
先日、貴兄と酒席を共にした際、ここから本題と思った先に無情にも多忙な貴兄の時間がなくなり、口惜しくも語りきれなかった事を、酔いに任せて記した。
だが結局、貴兄には出さないことにした。
ご存知のとおり、こちらは日に一箱の煙草を嗜好する馬鹿舌である。
食に関する知識があるわけでもない。
ただ、我が一族は、東京に居を構えて四代目になる。
江戸っ子を名乗れる程の街では育っていないゆえ、大きな声は出せないが、幼いころより関東の味は、よそ者に語れる程度には身についている所存である。
そう思うからこそ、天丼の蓋に絡めて、江戸の食通話を書き進めていたのだが、途上ではたと気がついた。
粋じゃない。
食い物についてああだこうだと蘊蓄を傾けることは、粋じゃない。
もちろんうまいまずいはあります。味の好みだってあります。
だけどそれを人に話すのは、品がない。
古臭いと言われるだろうが、命を繋ぐための食事を、趣味や嗜好の範疇で語りたくないんです。
極端に言ってしまうなら、出されたものをそのまま美味しく食べるのが、食事の本来だと思っている。
なのに、見ず知らずの他人の評価でうまいまずいを判断するなんて!!
そう思うからこそ貴兄との店選びでも、インターネットの口コミなどは参考にせず行き当たりばったりで選んできた。
その選び方が良いと言ってくれるのは喜ばしい。
ああだこうだも、貴兄と個人的に話す分には構わない。
だが、文字にして残すことは、できない。
せっかく一緒にやろうと言ってくれたところに、水を刺すようなことを書いてしまい恐縮の限りである。
この返信を載せる載せないは貴兄の判断に任せる。
交換日記自体は、これからも拝読させていただく所存である。
江戸っ子として蕎麦だけにはこだわりがあるから、何か言わせていただくことが来るかもしれない。
その時はまた相談させていただきたく存じます。
ハラダ・アキヒロ
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