![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/64346895/rectangle_large_type_2_804d39644ecb19124970ecfc67c7a254.jpg?width=1200)
宇治川の絶望の淵より~そうだ 京都へ行きたい②【2021/10/20】
そうだ、京都へ行きたい①【2021/10/19】の続き。京の旅には、小学生の頃から親しんできた『源氏物語』の舞台を巡るというテーマを設けている。東海地方に住んでいた数年前までは、思い立ったら吉日、日帰りで気軽に行っていた。
一番印象に残っているのは、光源氏亡き後、子や孫が主人公となる45巻「橋姫」から最終巻54巻「夢の浮橋」までのいわゆる「宇治十帖」の舞台、宇治を訪れたときだ。
薫と匂宮という2人の貴公子の板挟みとなり、悩んだ末にヒロイン浮舟が身を投げた宇治川。前日に雨が降ったせいもあっただろうが、想像していたよりも川の水量は多く、流れが速かった。轟音を立てる川音に、一瞬恐れをなしたほどだ。浮舟は、どれほどの覚悟で、この川に飛び込んだのだろう。その絶望の淵の深さを思い知らされた気がした。
その一方で、浮舟は、この宇治川に刻まれた愛の幸福な一瞬も思い返していたのかもしれないと思った。匂宮と共に、橘の小島と呼ばれる宇治川の中洲へ舟で漕ぎ出し、愛を誓い合った夜も描かれているからだ。浮舟は、匂宮との愛の思い出に殉じようとしたのかもしれない…。
宇治川のほとりを歩きながら、入水自殺を図った浮舟の胸の内に思い巡らした。
物語の想像上の場面が、モデルとなった舞台を歩くと、鮮やかにイメージがわき上がってくる。『源氏物語』の舞台を巡る京の旅は、首都圏に転居してからは足が遠のいているが、これからも少しずつ続けたいと思っている。