圧倒的な春
春が来た、というのに私の心を占めていたのは、とても私的で小さく身近な問題でした。
仕事の中で起きていた、ちょっとした闘いに負けたんです。
あ、別にケンカしたとか、言い争ったというようなものではありません。
ある仕事に立候補したのですが、私は担当になれなかったのです。
当初、この仕事の担当になるのは、ほぼ私で決定していました。
しかし、もう一人の立候補者の思い入れが強いことも知っていました。
なので、そのもう一人が担当になること自体は構わないのです。
そうは言っても数日間、何が敗因だったのだろうと、クヨクヨと考え込み、自分事で頭がいっぱいになっていました。
その人がいつ、どんなアプローチをして担当を勝ち取ったのか、今となっては分かりません。
気分転換をしようにも、スマホやパソコンから、今日も不穏なニュースが垂れ流され、うかない気持ちに。
そんなときに出会った梅の巨木でした。
悠然と咲き誇る満開の梅の花。
圧倒的な春に、一瞬で心が埋めつくされる安堵感に包まれ、いつまでも呆然と梅の巨木と向き合っていました。