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「体験農場 むそう塾との出会い」新規就農への記録・その6

市報を眺めていて、「体験農場 むそう塾」という名前を発見。ん?体験?これはもしかして、いろいろと教えてもらえるのだろうか?
あと「30年以上農薬や化学肥料を使用していない畑で、おいしい野菜を作ってみませんか?」とも書いてある。これって、有機野菜ってことかな?有機農法ってなんだか難しそうな気も…。

もちろんそのころの自分は、無農薬の野菜をお店で見たことはあっても、化学肥料と有機肥料の違いもわからなかったし、なんなら肥料は必ず使うもので、使わないと野菜は作れないと思っていました。でも、このむそう塾に出会ったことが、自分の畑との向き合い方を決定づけるものとなったのです。

畑については、自分の中で「借りる」「教わる」がセットになっていて。
それが今回、同時に叶いそうかな、と。
そのためにも、まずは、連絡せねば。ということで、電話をします。
…つながらない。またかける。…つながらない…。
そうこうしているうちに、1か月は経ったでしょうか。
意を決して直接畑に行ってみることに!
でも、Google先生によると、利根川沿いの広ーい田んぼの中にあるらしいのですが、まったくわからない(笑)。でも、農道をぐるぐる走っていたら、看板発見!看板大事!
そこにいた塾生の方に、いろいろと直接お話を伺うことができました。

この「むそう塾」は、Tさんという方が有機農業歴30年の経験を活かし、2002年4月「伝習農場むそう塾」として開設されたものとのこと。
昔の地域のNPO法人のインタビュー記事にこんなことが記されていました。

<むそう塾を始めたきっかけ>
 農地の所有権は個々の農家にあるが、後継者難と老齢化で耕作放棄さ
れる農地は拡大するばかり、「土地は誰のもの?…地球は誰のもの?」と問うと耕作放棄は許されることではない。一方で、団塊の世代のリタイヤで家庭菜園志向はますます高まると予想される。
大量リタイヤの現象は、都市と農村、双方に同時に進行する時代に突入しようとしている。この時期に、双方の間に入り、菜園志向の市民を対象にしっかりした循環型農法を伝授し、農地を斡旋するシステムの構築が急務である。むそう塾は、そういう時代の要請に一役買えたらと開設した農業塾である。

私が畑に伺ったときにお話をお聞きした方を含め、初代のメンバーの方々が中心になって塾を運営されているとのこと。なので、メンバーも年配の方々が多いし、Tさん自身もご高齢で、耳が遠くなり、多分電話の音が聞こえてないんじゃないかなあ、という話でした。

そうなんです。その後無事に代表のTさんにお会いすることができたのですが、すでに物忘れが増え、認知症の症状が出始めていらっしゃいました。そのため、まる2年ほどお世話になったのですが、直接たくさんのことを伺えずじまいで。

それでも、畑に見えられた時には、「抜いた草を捨てたらもったいないよ。畑に敷きなさい。立派な肥料になるから。」とか、「肥料はね、大丈夫。そんなにあげなくても育ちますよ。野菜はそもそも元気だから。」「たくさん畑に通って、たくさん野菜を見てみることですよ。」「畑、土地は、本来誰のものでもない。みんなのもの。だからこそ大事に守っていかなきゃならない。」「私はね、百姓、という仕事、生き方が好きなんですよ」などなど、その都度農業の基本を教わることができました。

多分、Tさんと出会わなければ、むそう塾と出会わなければ、こうして「農家になる!」ということも考えなかったかもしれません。「滑り込み」で出会えたことに感謝しなければ、と思っています。

千葉を去り、新潟に引っ越すときには、ずいぶん認知症が進んでしまい、お会いすることも叶わなかったのですが、あの時教わったことを大切にしながら、私も立派な「お百姓さん」になりたい。そして、少しでも<畑>のことを伝えていく役割を担えれば、少しでも恩返しができるかな、と思っている今日この頃です。

「借りる」「教わる」は人との縁、出会いそのもので、新規就農って、結局のところ、人とのつながりなんだなあ、と思います。「はたけのいす」も、人との出会い、つながりを大事にしながら、やさしさをリレーできる場所にしていきたいなぁ、と思っています。

次回は、この「むそう塾」でまる2年間学んだことを、具体的に整理してみたいと思います。

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