パーソナライズ化した購買体験
こんにちは、コーイチです。
今回は、オンラインとリアルを兼ね備えた買い物体験が出来る「Amazon」初のアパレル店「Amazon Style(アマゾンスタイル)」を見ていき、今後のリアル店舗には、どんなことが必要なのか考えていきたいと思います。
1. Amazonのリアル店舗
以前、noteに当時の「Amazon」のリアル店舗のことを書きましたが、その時から少し状況が変わっています。
「Amazon」が経営するリテールは6種類あり、無人店舗コンビニの「Amazon Go」、食料品の「Whole Foods」、「Amazon Fresh」、4つ星以上の雑貨やおもちゃがそろう「Amazon 4-Star」、4つ星以上の本が並ぶ「Amazon Books」、そしてショッピングモールに設置される「Amazon Pop Up」があります。
2022年3月に「Amazon」はこの内の「Amazon 4-Star」、「Amazon Books」、「Amazon Pop Up」の全68店舗を撤退する計画を発表しました。
ロイターによると、リアル店舗の事業は収益が低く、「Amazon」の他事業の成長の足を引っ張っていたということです。
コロナ禍でアパレル業界全体は打撃を受けましたが、一方で、ステイホームの影響でラウンジウェアやヨガウェアなどのリラックスウェアの需要が増加しました。
アスレチックとレジャーを足した、「アスレジャー」という新たなファッションジャンルが生まれたほどです。
こうした分野に強い「Amazon」のアパレル売り上げは、急速に伸びていきました。
2021年のウェルズ・ファーゴの調査結果によると、「Amazon U.S.」のアパレルおよびフットウェアの売り上げは20年に約15%伸びて410億ドル以上となり、これは競合の「Walmart」と比べて約20~25%も高い数字となりました。
また、「Amazon」は米国全体のアパレル消費では約12%を、アメリカのEC上でのアパレル消費で言えば約35%ものシェアを占めています。
ECアパレル業界では、3分の1以上のシェアを「Amazon」が占めていますが、全体を見ると、8割以上の消費がその他の店舗などで行われていることが分かります。
この未開拓の市場に進出するために、今回「Amazon Style」がオープンすることになったのではないかと考えられます。
(出典:Amazon News youtubeより)
2022年3月の撤退計画発表の際、「Amazon」の広報担当者は、「引き続き、我々は素晴らしい物理的な小売り体験とそのための技術の構築に取り組んでいく。今回の閉店の影響を受ける従業員については、「Amazon」内で新たな役割を見つけられるように緊密に話し合っているところだ」と語っています。
2.Amazon Style
(出典:amazon youtubeより)
「Amazon Style」は、2022年5月に、カリフォルニア州グレンデールのショッピングモール「The Americana at Brand」にオープンしました。
AI技術やスマートフォン向けアプリなどを活用してパーソナライズ化した買い物や試着などを可能にし、これまで高級店で実施していたようなきめ細かなサービスを安価な店でも提供することを目指しています。
「Amazon Style」は、メンズおよびレディース向けのアパレル、アクセサリー、シューズを取り扱っており、この店舗では「Levi's」「Tommy Hilfiger」「Pavoi」「CRZ Yoga」「Champion」などのブランドを取り扱っています。
各アイテムは、「Amazon」のサイトと同一価格で販売し、サイズはXSからXXLまで展開しています。
ロサンゼルス都市圏の顧客は、「Amazon Style」を訪れ、おなじみのブランドや新進デザイナーの商品を見ることができるようになりました。
「Amazon Style」は、実際に商品を手にとることができるリアル店舗でのショッピングをテクノロジーと融合した体験を提供しています。
例えば、店舗を訪れた客は、商品を選んで「Amazon Shopping」アプリでQRコードをスキャンすると、色やサイズのバリエーションをはじめとする商品の情報を確認できます。
同アプリでは、商品を試着室やレジに送ることも可能で、自分に合うサイズを探したり、商品を持って店内を移動したりする必要がなく、指定したアイテムが試着室に用意されると、通知が届く仕組みとなっています。
リクエストしたアイテムは「わずか数分で」試着室に送られてきますが、このシステムには同社のフルフィルメントセンターの技術が応用されています。
また、「Amazon Style」はアルゴリズムを使って、パーソナライズされたおすすめ商品の案内や、キュレーションによるコーディネート例も顧客に紹介します。
店舗を訪れた顧客が気に入った商品をスキャンして、好みを絞るにつれて、アプリが好みに合ったお買い得品をお知らせするようになっています。
「Amazon」によると、試着室にいる時には、顧客が選んだ商品に加えて、好みに合わせて提案されたスタイルを見ることができ、快適な試着室からショッピングを続け、試着する他の商品を届けてもらうこともできる「パーソナライズされたスペース」になるように設計されてるということです。
店舗の従業員が顧客を迎え、チェックアウトを支援し、商品を試着室に運びます。
しかし、顧客が店舗で直接商品を見て回り、その後にオンラインで購入することもできます。
あるいは、「Amazon Shopping」アプリで商品をスキャンして取り置きし、後日に購入したり、「Amazon.com」で扱われている衣類を店舗に送ってもらい、試着したりすることも可能ということです。
3.Z世代の購買傾向
(出典:CBS 8 San Diego youtubeより)
コロナをきっかけに消費者のアパレルショッピングの動向も変わってきました。
Z世代は「自分に必要なもの・必要でないもの」を客観視して選別しようとするため、購入を検討する際はじっくり時間をかけて情報を集めます。
そして消費の特徴としては、コストパフォーマンスを重視して商品やサービスを選ぶ傾向にあります。
Z世代が情報を集めるときは、主にTwitterやInstagramを駆使し、実際に商品やサービスを利用した人の評価を参考に消費活動を行います。
また、大学生や社会人だとWebメディアを、中学生や高校生はYouTubeを参考にすることもあります。
主にSNSで情報を集め、第三者の口コミやレビューを購買の意思決定に反映させるZ世代は、別名「ソーシャルネイティブ」とも呼ばれており、この世代は、アナログ文化に慣れ親しんだ世代やデジタルネイティブ(主にミレニアル世代)とは、まったく異なる消費行動をとります。
Z世代はオンラインでのショッピングに全く抵抗がなく、オンラインショッピングに慣れていますが、同時に、オフラインでの買い物を楽しむ傾向もあります。
インターネット上でのコミュニケーションに慣れきっているため、逆にオフラインでのリアルな体験価値が向上し、店員と積極的に会話をし、インターネットからは得られないような情報を入手することも楽しみます。
また、ユニークかつパーソナライズされた商品に魅力を感じることもあるため、購入履歴をもとに適した情報に触れられるような環境づくりが有効と言われています。
Z世代全体の傾向としていえるのは、お得な商品を失敗せずに購入したいという気持ちが強いことと思われます。
10代のうちからスマホやSNSでさまざまな情報を得ているZ世代は、社会貢献を目的とした商品や、長く使える価値のある商品を好み、Z世代と誠実に向き合い、一人ひとりと対話をするようなマーケティングを行うことが大切だと言われています。
4.最後に
(出典:Reuters youtubeより)
2021年に金融サービス大手のコーウェンのアナリストが行った調査では、ミレニアル世代の消費者の34%が、アパレルを購入する際にまず「Amazon」を検索すると回答したそうです。
その内、約17%はまず百貨店チェーンや会員制の大型ディスカウントショップに足を運んだと回答し、15%はグーグルで検索をしたと回答しています。
Z世代とミレニアル世代の消費者は、従来の小売店が営業を再開しても依然として「Amazon」に依存していると指摘しています。
「Amazon Style」の展開により、「Amazon」が競合「Walmart」とは異なるセレクションで、よりファッショナブルなアパレル商品を店舗に置き、今まで「Amazon」でアパレルを購入しようと考えなかった層にリーチできる可能性があります。
ファッション感度が高い顧客層を取り込むには、非接触技術や試着室での顧客体験だけでは訴求力が足りず、品ぞろえが重要になってきます。
その点、「Amazon」は近年では「Oscar de la Renta(オスカーデラレンタ)」や「Elie Saab(エリーサーブ)」などの高級アパレルブランド商品をEC上で数多く取りそろえるようになっており、カテゴリー拡充にも力を入れています。
米国の一般的なファストファッションのアパレルショップでは店員の数がいつも足りず、レジと試着の返却などを同じ窓口で対応するところが多いため、長蛇の列になっていることが多いのが現状です。
こうした列がなくなることにより、顧客がより快適に買い物をできるという利点は大きいと思われます。
日本でも、消費者が利便性を体感できる形として、リアル店舗とECの買い物体験を継ぎ目なく結ぶ環境の整備が進んでいます。
ECで買った商品を実店舗で受け取る「ユニクロ」の〝ORDER&PICK〟、実店舗を展示場にする〝ショールーミング化〟もそのひとつですが、「CHOOSEBASE SHIBUYA」は全商品を持ち帰りできるように対応し、さらに半年ごとに商品の編集テーマを変えることで企画性を高めています。
また、「ドットエスティストア」は、気に入った商品の着こなしを映すサイネージを設置するなどして、顧客とスタッフとの接点を高めています。
Z世代の消費動向を踏まえると、販売員に会ったり、知識に触れたり、ブランドの世界観を感じたいという人もいると考えられ、リアル店舗はECで補完できない価値を提供する場が求められています。
また、環境に配慮するだけではなく、服を作る意義や理念を伝え、共感を得ることも重要になるかと思います。
「Amazon」の他の形態の実店舗事業が撤退を決めた中、この新しい「Amazon Style」は成功できるのか、楽しみに見ていきたいと思います。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
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