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エッセイ

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#サッカー

現地に行って初めてわかる魅力もある

高校生の頃、友人に美術館に誘われた。なんでも魅力的なイベントが開かれているそうで、しかし高校生が一人で足を運ぶのは心細いので誰かと一緒に行きたいらしい。 僕は美術品といえばモネと東山魁夷が好きなくらいで、あとはほぼ無関心。「美術品なんてスマホで調べればいくらでも鑑賞できるし〜」などと考えている若造だったが、「丸の内のレストランで昼を奢るからさ」と言われてついて行くことにした。 迎えた当日、僕らは丸の内の地下でそこそこ高額な昼食をとり、美術館に向かった。友人は美術品を見てし

「先生、自分はプロのサッカー選手になるんで、勉強とか必要ないっす」

塾でアルバイトをしていた頃、担当していた中学生男子にそう言われた。 彼の発言を読んで「幼稚だなあ」と思った人もいるだろう。しかし僕は違った。というのも、他の生徒から聞くところによると、彼のサッカーの実力は「半端ない」そうだからだ。中学生のレベルをゆうに超えており、彼目当てで連日サッカーの名門高校からスカウトが押し寄せているのだとか。 以前に彼からサッカー選手としての自己分析とチームの戦術について話してもらったことがあるが、それを聞いた感じではサッカーIQも高そうだった。 彼

サッカースタジアム体験記

現在、Jリーグはコロナウイルスの影響で中断されている。再開されてもしばらくは無観客試合が続くだろう。Jリーグ各クラブは大きな収入源を失い、苦境に立たされている。 今の僕は、1日でも早くリーグが再開できるよう外出を自粛し予防を徹底することしかできない。しかし、いつか通常に戻った時に、スタジアムに馴染みのない多くの人々に「スタジアムに行ってみるか」と思ってもらうことは出来るかもしれない。そう思いこの文章を書くことにした。 サッカースタジアムに行ったことのない人には、この文章で「

ハーランドからの2億円

(注) 想像力を働かせてお読みください 眠い。まだ昼なのに。昨夜遅くまでドルトムントvsシャルケを観ていたせいだ。 不快感を伴う眠気だ。このまま椅子に座っていてもイライラするだけだ。そう思い、僕は散歩をすることにした。 歩いていると、いつのまにか母校の近くまで来ていた。都内の大学にしては広く、緑豊かなキャンパスだ。 ノスタルジーに浸りたくなった僕は、学生時代によく友人と昼食を取ったエリアに向かった。 古びた横長の校舎の前に、長方形の空き地がある。その空き地を囲むよう

公園でサッカーをしてきた

外は雨が降っていた。部屋から薄暗い空をボーッと眺めていた僕は、ある健全な欲求を催した。 「ボールを蹴りたい」 ここ最近、無性にボールを蹴りたかった。もう1ヶ月近くサッカーの試合を観戦していないし、昔の試合を観るのにも飽きた。もはや自分でボールを蹴るしかない。サッカー経験者だからだろうか、毎度そんな論理の飛躍をしてしまうのだ。 午後3時。ようやく雨が止んだので僕は公園へ向かった。服装は上下ともに某強豪クラブのジャージ。体格と併せて、完全にサッカー青年だ。 付近に公園はい

もしもサッカー選手になっていたら 〜選択と集中の弊害について〜

「将来はサッカー選手になります」 「高校サッカー選手権に出場したいです」 これは、当時小学生だった僕の作文の題名である。 なぜ少年は自信満々だったのか。理由はシンプルに「自分に自信を持っていたから」だ。 地域の最上位当時、僕はスクールカーストどころか地域カーストの最上位にいた。(こう書くと田舎のガキ大将を想像する人が多そうなので否定しておく。僕の住んでいた地域はなかなかの都会だったし、僕自身もガキ大将ではなく、冷静な読書の虫だった) 僕には複数の武器があった。校内で1〜

シュートブロックが怖かった話

これは、僕が小学生だった頃の話。 僕はサッカー少年だった。ポジションは主にボランチ、サイドバック、センターバックだった。日本代表で言えば柴崎、長友、吉田だ。当時なら稲本、加地、宮本か。 ドリブルが苦手なことを除けば万能型だったので、他のポジションの経験もあった。が、上記3つが8割近くを占めていたと思う さて、これら3つのポジションには共通の特徴がある。それは「守備の機会が多い」ということ。立ち位置が後ろなのだから当たり前だ。 僕は守備力に自信があったので、この特徴はノープ