【全国ツアーイベントレポート】宮城県石巻市編「若者が社会へ踏み出しやすくなるための、あたらしい地元とは」
みちのく宮城第二の都市、石巻市。
北上川の恵みの大地と世界三大漁場・金華山沖を抱える自然豊かな食の宝庫です。
故・石ノ森章太郎先生の作品を展示するマンガミュージアム『石ノ森萬画館』や『サン・ファン・バウティスタ(復元船)』を係留展示する『サン・ファン館』など、見どころがいっぱいです。
本日はそんな「宮城県石巻市」で開催した「ハッシャダイソーシャル 書籍出版記念全国ツアー 『ハッシャダイ、もっとはしゃぎたい』宮城県石巻市編」のあの時間を、いくつかの写真と共にふり返っていきたいと思います。
担当は、新人広報の飯田です。
今回の舞台「宮城県石巻市」は、三浦にとってはじめて足を運んだ場所ではないのです。
三浦が音楽のライブをはじめて体験したのは18歳の頃。バンドをやっている恩師に連れられて訪れたライブハウス「石巻BLUE RESISTANCE。その場所こそが、宮城県石巻市。
再び訪れた2023年11月に、今回地域サポーターとしてご協力くださった一般社団法人イシノマキ・ファームさん、一般社団法人フィッシャーマン・ジャパンさんと出会いました。
そんな宮城県石巻市が、出版記念全国ツアーの第3拠点目となりました。
8月9日(金)午後6時30分ごろ。
頭上にひろがる空があたたかいピンクや橙色に染まってきたころ、だんだんとひとが集まってきました。
東日本大震災で被災したガレージを手作りで改装し、2016年に大幅な改装を経て、コーヒースタンドやホールを備える複合的な文化施設、「IRORI」。
ここが今回のイベントの会場です。中と外・街と人・現在と未来、様々な立場の人がフラットに集い、つながり、触発し合う場「街のロビー」と言われています。
あたたかく温もりを感じる「IRORI」には、30人近くのお客さんが集まりました。
「こんにちは〜」というさわやかな挨拶に「こんにちは!!!」と元気100倍で挨拶を返す勝山や「わあ、久しぶり!」と、うれしそうに頬を緩ませ会話を弾ませている様子も。
石巻に住んでいる方はもちろん、遠方からハッシャダイソーシャルに会いに来てくださった方々もいて、イベント開始前なのに、すでに瞳はちょっぴりうるっとしておりました。
午後7時00分ごろ。
「こんにちはっっっ!」と会場全体に声を響かせる三浦宗一郎(以下、三浦)と、「こんにちはっ」といつも通りニヤニヤしちゃってる勝山恵一(以下、勝山)との姿。イベントがはじまったようです。
前日の福島県伊達郡国見町とは、また違った空気感。飯田もわくわくしてきました!
午後7時30分ごろ。
いよいよ、トークセッションが始まりました。
宮城県石巻市の登壇者は、高橋由佳さん、松本裕也さんです!
トークセッションでは、現代の若者の「Choose Your Life!」の話や一次産業の意外な視点からの魅力、おせっかいは大事!話など、石巻市ならではの会話を弾ませました。
一部だけ、ほんの一部だけですが、トークの内容をお届けします。
言葉のコミュニケーションによって生まれる”信じられる状態”
三浦:ゆかさんは、これまでの活動の中で、たくさんの若者たちとの関わりをもたれていると思います。その中で、若者たちを取り巻く環境の変化をどう感じられていますか?
ゆかさん:周囲の大人たちというか、社会全体に余裕がなくなっているのかな、というのを感じています。
もういまから20年くらい前の話なのですが、私たちが関わっていたある引きこもりの若者が、頑張ってラーメン屋のバイトを自分で見つけて働き出したんです。
お昼の時間ってラーメン屋はとっても忙しいじゃないですか。その子は少し不器用な子だったから、お客さんの片付けから次のお客さんのご案内までが、ちょっともたついちゃったらしいんです。
そしたら、お客さんが「お兄ちゃんお兄ちゃん、ここ(テーブルの上)ちゃんと拭いてよ」って言われて、「すみません…!」ってバタバタしてた。
そうしたらそのお客さんが「いいよいいよ」って手伝ってくれた、と。そういうすごい親切な方々のおかげでバイトができるようになったと、話をしていました。
でも、最近だと、そういう若者がミスをすると「なんだお前!店長だせ!」「ちゃんと仕事してんのかよ!」って怒鳴られるみたいなことが増えているんですよね。
三浦:確かに。実際にそういう場面に遭遇することも、SNSで見かけることも増えたかもしれないです。
ゆかさん:若者が頑張ろうと思っても、そういうちょっとしたミスが許されないことで、また自分に自信を無くしてしまうんですよね。
やっぱり、20年前と比べて、現代の人って余裕がなくなっていると思います。
余裕がない人たちがすごく多くなった社会だから、こういうことを許容したり受容したりすることができなくなってしまっている。
それがSNSの誹謗中傷とかにもつながるのかもなあと思っているんですよね。20年前と現代の大きな違いを感じます。
勝山:そう思うと、この20年で地域の中でのコミュニケーションも減ったと思うんです。近所のおっちゃんと話すことや叱られることもないんだろうな、と。そういうところからも、時間のなさと言うか、余裕のなさを感じます。
三浦:たしかに。余裕や余白はいろんなところからなくなっているかも。
勝山:この前、少年院の院長が、少年院に入ってくる子の多くは日本語が苦手な若者が多いとおっしゃっていていました。
ゆかさん:その通りですね。
勝山:社会全体に余裕がなくなってきていることで、人とコミュニケーションをとる機会が少なくなっているのも、日本語が苦手な若者が増えている1つの要因なのではと思っています。
まさに若かりし頃の僕もなんですけど、言葉を知らないからこそ、めちゃくちゃ感情的になりやすかったんですよね。
少年院に入ってる若者達の多くは、そもそも言葉を知らなかったり、言葉を通してのコミュニケーションに慣れていない。
少年院じゃなくとも、人と人との対話ができなくなっている人が増えてきているんじゃないかな、と感じています。
三浦:やっぱり、余裕がないと対話は難しいですよね。普段、多くの大学生と関わっている松本さんはこの辺り、どう感じられていますか?
松本さん:僕は「信用」とか「信じる」ということが、結構いま重要だなと感じていて。
人とのコミュニケーションって、こわいから話せないとか、自分自身を信じられないから進めないということがあるかと思うんです。
自分のことを信じてくれる人がひとりでもいたら、孤立感は減る気がしています。
だから大事なのは「誰かが信じてくれている」という状態を作ることなんじゃないかなと思っています。それは究極、誰でもいい。
三浦:確かに。
松本さん:だから、信じることをうちのインターンでも大事にしていて。
うちのインターンはみんなで一緒に住んで生活をともにするんですけど、その中で自然とコミュニケーションが生まれたり、何かあったら絶対に話し合うとか。そういうことを積み重ねていって、「信じられる状態」を作ることは心がけていますね。
コミュニティにおける「束縛」と「自由」のバランスの取り方
三浦:自分を信じてもらえて、かつ、居てもいい場があるって、とても大事で、ありがたいことなんだと、改めて思います。
一般的な会社での仕事って、基本的にはめちゃくちゃマニュアル化されてると思うんです。だから、自分である必要性を感じにくい構造になっているというか。
一方で、農業とか漁業って、人と人との関係性が深い分、自分である必要性を感じやすいんじゃないか、と思うんです。
あくまで僕のイメージですけど、「コーヒーちょうだい。」って上司に言われた時に、エメラルドマウンテンなのか、モーニングショットなのか言われなくてもわかる、みたいな。
一同:(笑)
三浦:そういうマニュアルにはならない、関係性を含めて、「お前じゃなきゃいけない」という環境が農業や漁業などにはある気がしているんです。
ゆかさん:確かにそうかもしれないですね。
三浦:「お前じゃなきゃいけない」だからこそやめてほしくない、だから束縛的になる。
一方で、「誰でもできる仕事」だから自由になれる。
この「束縛」と「自由」の難しさがあるな、と思っていて。
ゆかさん:いや、それめっちゃわかるなあ。
児童養護施設にいた子が一般企業に就職するじゃないですか。
そうすると、就職先は「孤独」や「孤立感」でいっぱいだって、帰ってくるんです。話を聞くと、「誰も声をかけてくれない」「誰からも声をかけられずに、1日ポツンとして終わるんです。」って言うんです。
施設にいると、わりと”常に声をかけてくれる環境”があったんですよね。「〇〇ちゃん大丈夫?」「よくやったね!」って。
ところが、就職した瞬間、ほっとかれるじゃないですか。社会にとってはそれは一般的でも、彼らにとってはそうじゃないんですよね。
だから、「自分はちゃんと仕事できてるのかな」「自分はここにいていいんだろうか」って考えこんでしまうんです。
ところが農業は「どうだ!やったか?できたか?」って、すごく気にかけてくれる環境が多いんです。だから、孤立を感じづらいんですよね。
さっき三浦さんがおっしゃったように、「お前じゃなきゃいけない」という環境が自分の居場所になっていく。でもそれが、いつしか束縛的に感じてしまったりもする。
その相反的なところが難しいですよね。
ここはすごくバランスなのかな、といまお話をきいて感じました。
社会はひとりひとりが作っているもの。農業や漁業だけが、特別じゃない。
三浦:とある沖縄のヤンキーたちを研究していた方がいて。その研究者の方は、実際にコミュニティの中に入ってヤンキーについての研究されていたんです。
その方とお話ができる機会があったので「ヤンキーたちの何を研究していたんですか?」って聞いたんです。
そしたら、「よくコミュニティの研究をしているんですか?って聞かれることが多いけど、僕は"地元"の研究をしていたんだと思うんです。」って答えてくださったんです。
勝山:地元の研究?
三浦:そう。その方から聞いた話だと、そこにいるヤンキーたちは、困っても社会に頼らない。怪我をしても病気をしても、行き先は役所ではなく地元の先輩のところ。彼らは、社会に対しての信頼感はまじでないけど、地元に対しての信頼感はめっちゃあるんですよ。
勝山:それめっちゃわかる。
三浦:これが先ほど話にもあった、「束縛」と「自由」の難しさなのかな、と。地元という環境に救われてもいるが、縛られてもいる。
だから、都合がいいかもしれないですけど、ちょうどいい”あたらしい地元”をどう作っていけるのか、ということがこれからの時代めちゃくちゃ大切だなって最近、思っているんです。
その辺、みんなの地元的な存在であるゆかさんはどう考えられてますか?(笑)
一同:(笑)
三浦:僕、今日里帰りみたいな気持ちで来ましたもん。
ゆかさん:まあ、みんな息子、孫だからね。(笑)
最近の若者には、感情表現に抵抗がある方が多いなと感じています。
でも、会話をしたり、徐々にコミュニケーションをとっていく中で「感情を表現していいんだ!」ということが分かると、その人にとってすごく安心できるコミュニティになって、ちょっとずつ地元感が出てくる。
例えば、農業だと、10分とかでいける距離の近所のおばあちゃんを手伝いに行くんですよ。その中で生まれるコミュニケーションもそうだけど、その次の日に漬物を持ってきてくれたり、お裾分けをしてくれたりするんです。
そうすると、手伝った若者は「自分は人の役に立っていたんだ」と感じて、自分の中での”安全地帯”ができるんですよね。
こういう積み重ねが、社会へ踏み出す一歩になったりするんじゃないかなと思っています。
農業や漁業にはこういう良さがあるなあ、と。
三浦:安全地帯でありながら、挑戦の自由が確保されているのが重要であるということですね。地域ではなく、都市部や一般的な企業で、あたらしい地元的なコミュニティをつくるためにはできそうなことはありますかね?
松本さん:他の職と比べても、農業や漁業はコミュニケーションが多く、特別だと思われがちなんですけど、そうじゃないなと感じていて。
社会はひとりひとりが作っているもので、ひとつひとつの仕事は社会としての役割で、それぞれが支え合っているものだと思うんです。
実際に、営業職の仕事評価でも「個人の能力だ!」とよく言われがちだけど、その個人個人の力で支え合っているわけだし。
だから僕、社会人というものがあくまで”サラリーマン”であり、”会社で働く人”という認識になってしまっていることにすごく違和感があって。どんな職も変わらないはずなのに、と思っています。
だから、若者たちが自分が”社会を作っていく一員である”ということを認識できる機会をつくることが重要なんじゃないかなと思うんですよね。
それには就活とかじゃなくて、「社会」と「自分」の距離を学ぶ機会を、学生と社会人の間に挟む必要があるんじゃないかなと思っています。
三浦:なるほど。できるだけ、多様なグラデーションの中で、人間と人間とが関わりあえる余白づくりをどうすればできるのか、考えていきたいですね。ありがとうございました!
素敵な場をともにつくりあげてくださった、地域サポーターである一般社団法人イシノマキ・ファームさん、一般社団法人フィッシャーマン・ジャパンさん・弊社の代表である三浦宗一郎より、コメントをいただきました!
こころあたたまるパネルディスカッションを繰り広げてくださった登壇者の皆さまにも、コメントをいただきました!
写真で振り返るフィールドワーク
イベントの翌日には、高橋由佳さん・渡部更夢さんに企画をしていただき、フィールドワークをさせていただきました!
一般社団法人イシノマキ・ファームさんが運営しているホップの栽培体験や、石巻市震災遺構として知られている大川小学校、三陸鮮魚のスペシャリストである布施商店など、さまざまな場所を訪れました。
この2日間で宮城県石巻市という町について、より一歩、深く踏み入れられた気がします。
また、必ず訪れたい。大好きなひとを連れて。
そう自然と感じてしまう、魅力のあふれた町でした。
由佳さん、更夢さん、そして関わってくださったみなさま、本当にありがとうございました!
開催概要
2024年3月19日、 朝日新聞出版より、ハッシャダイソーシャル初の書籍、篠原匡氏著『人生は選べる Choose Your Life—— ハッシャダイソーシャル 1500日の記録』が発売されました!
ご購入はこちら
本書には「Choose Your Life!それでもなお、人生は選べる」をスローガンに掲げ、1人でも多くの若者がどのような環境からでも自分の人生を自分で選択できる社会を目指して活動してきた1500日間の記録が記されています。
すでに読者の方からたくさんのお声をいただいておりますが、
本書を通じて、もっとたくさんの人と出会いたい!本という相棒を携えて、これまでお世話になってきたみなさんに会いにいきたい!自分たちの可能性をもっとひろげたい!
という想いが溢れちゃったので、出版記念全国ツアーを開催することにしました!!
開催予定地域
2024年11月15日:長崎県松浦市
2024年12月8日:北海道札幌市
2024年12月13日:宮崎県宮崎市
2024年12月22日:愛知県一宮市
2024年1月19日:宮城県仙台市
一緒に若者の「可能性」を応援しませんか。
全国の学校や少年院・児童養護施設等に、様々な「Choose Your Life!」の機会を届けているハッシャダイソーシャルの活動は、全て皆様の寄付・協賛のおかげで成り立っております。
もしよろしければ、若者の「可能性」を応援する仲間になっていただけると嬉しいです!一緒に叶えましょう。
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