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自由創作#27 一月の縄

1月の雪もちらつく寒い日
僕はとあるゲームに参加する事になった。

主催側からルールは事前に伝えられていた。
ルールは簡単
途中で死んだ奴は負け。不正は許されない。
最後まで生き残った奴が勝ち。
時間は10分間。
Death gameの始まりだ。

参加人数は93名
緊張感が漂う。

開始の合図が鳴った。
開始早々、脱落者が出た。
それも1人や2人ではない。
近くで友人が死んでも動揺してはいけない。
自らが10分間生き残ることだけを考えなくてはならない。

2分経過。
その知らせが届いた時、僕は信じられなかった。まだ2分!?
息も少し上がってきた。
見物人たちが楽しそうに笑顔で僕たちを観ている。

4分経過。
まだ時間の半分にも到達していないのか。
生存者は半数と言ったところだろう。
絶対に10分耐えてやる。

5分経過。
やっと半分だ。
集中と緊張も相まって、疲労も溜まってきている。
周囲にはもう諦める奴すらも出てきた。
僕はやるぞ。

7分経過。
気づけば参加者も三分の一ほどになっていた。
噂には聞いていた。7分のラインが一つ大きな壁となり立ち塞がることを。
これが7分の壁。ここを何とかして耐え凌がなければ。

8分経過。
タカシが僕に向かってこう言った。
「俺もう無理だわ。最後まで頑張れよ」
自分の事で精一杯で忘れていたが、隣には友人のタカシが参加していた。
僕が励ましの声を返す間も無く、タカシは死んだ。
クソ!タカシが死んだ。
僕は絶対に最後まで。

9分!
ついにあと1分だ。
しかし、9分は第二の壁と言われている。
現に9分経過の直前に参加者は初めの十分の一の数にまで減っていた。
正直、僕の身体も既に限界だ。
あとは気合いでいくしかない。
残りはあと1分。
人生で最も長いであろう1分間への挑戦。

9分10秒
クソ!腕も足も動きが鈍くなってきた…
動け!動け!動け!

9分15秒
1秒すら果てしなく長く感じる。

9分20秒
少し離れた所で雄叫びにも似た声がした。
それに釣られるように1人2人とさらに死ぬ。
観ている観衆も盛り上がる。

9分25秒
残りは4人。
耐えろ。あと35秒。

9分30秒
また1人死んだ。

9分35秒
また1人死んだ。
そいつは静かに動きを止めた。

9分40秒
残りは僕ともう1人。

9分45秒
………
………
………
パチン!!!
あぁーーー!!!

僕の身体に死ぬほどの痛みが走った… 
1月の空気で冷え切った肌をビニール製の縄跳びが当たってしまったのだ。
僕のふくらはぎには赤い跡がついていた。

10分経過。
完走者は1人。そいつはスターだった。
観ていた保護者や別学年の生徒たちから歓声と拍手が送られた。

終わってから、
保護者会が用意してくれた温かいおしるこを
タカシと一緒に食べたのは良い思い出だ。

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