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「透明な螺旋」|東野圭吾 についての感想【読書】

東野圭吾さんのガリレオシリーズ第10作『透明な螺旋』が、待望の文庫化を迎えました。
ストーリーは、南房総沖で発見された男の銃殺死体をきっかけに、失踪した女性との関係や、捜査中に浮かび上がる湯川学(ガリレオ)の驚くべき秘密が明かされるというもの。

湯川の親友である草薙刑事や、その部下の内海薫も物語に深く関わり、彼らの絆や対立を背景に、事件が徐々に解き明かされていきます。
さらに、本作には特別収録の短編「重命る(かさなる)」も含まれており、読み応え抜群です。

東野圭吾さんの代表作であるガリレオシリーズは、天才物理学者・湯川が科学の知識を駆使して事件を解決するミステリーシリーズであり、物語は科学と犯罪、そして人間ドラマが交錯する中で展開されます。

今回も、誰も知らなかった湯川の過去が物語の重要な要素として描かれ、湯川の新たな一面を垣間見ることができる一冊です。

  • 出版社 ‏ : ‎ 文藝春秋

  • 発売日 ‏ : ‎ 2024/9/4

  • 文庫 ‏ : ‎ 368ページ

  • アマゾンベストセラー1位


感想・レビュー
『透明な螺旋』は、まさにガリレオシリーズの集大成とも言える作品でした。
特に、湯川教授の暗躍がこれまで以上に際立ち、シリーズファンとしてはその巧妙な手腕にただ感服するばかりです。

さまざまな人物の物語が交錯し、最後に全てがひとつの結論に収束していく構成は、東野圭吾さんの熟練の技が光ります。

タイトルの「螺旋」が示す通り、物語は複雑に絡み合い、読者はその謎に引き込まれていくこと間違いありません。

今回の物語では、湯川の過去が明かされることもあり、彼の人物像に深みが加わります。

個人的には、湯川が事件の真相にどのタイミングで気づいたのか、今回も全く予測がつかず、最後までハラハラしながらページをめくりました。
また、登場する女性たちの描かれ方にも少し疑問を感じましたが、それもまたこの作品のリアリティを増している要素かもしれません。

そして何より、草薙とのラストシーンや、奈江とのやり取りには胸を打たれました。

東野作品らしい人間関係の描写が冴え渡り、読了後には心に深い余韻が残ります。事件の背後に見え隠れするDVの問題や、過去の作品『容疑者Xの献身』との共通点なども興味深いポイントです。

この作品は、湯川の過去と事件が絡み合い、複雑な人間関係が描かれる一方で、湯川の冷静な分析が事件の謎を解き明かしていく過程が爽快です。ガリレオシリーズのファンはもちろん、初めて手に取る方にもぜひ読んでほしい作品です。

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