北島マヤごっこ
気が付くと「ガラスの仮面」は身近な存在として常にそばにあった、ように思う。そのため、小学生の頃はよく友達と登下校の最中、話題となり盛り上がった。
「亜弓さん、美人だよね、かっこいいし」
「でもマヤも可愛いいよね?平凡じゃないよ。洋服も可愛い」
当時の少女漫画は登場人物が花を背負うシーンも多く、ファッションもフリルやリボンがさりげなく使われていた。
北島マヤも劇団つきかげ時代には可愛らしいワンピースを着て桜小路君と亜弓さんのお芝居を見に行っている。
小学生女子には憧れの服装と目鼻立ちに映るため、どうしても北島マヤが平凡な容姿とは理解できなかったのだ。
今、LINEマンガで読み返しをしているが、やはりマヤは可愛らしい洋服を着ている。確かに子どもにはマヤも亜弓さんと同じく憧れの存在に映るだろう。
つきかげの寄宿生同士による「若草物語」の練習でスソさばき実感のため、ネグリジェで練習をするシーンがあった。このネグリジェも少女が憧れるデザインとして十分なものだった。
もう、あれはネグリジェじゃなくてよそ行きのドレスだ。
現在、「若草物語」の練習シーンを読んでいる。これから月影先生による厳しい指導でマヤはベスの心情を理解していくのだ。知ってはいるが、ドキドキする。これが「ガラスの仮面」の名作たるゆえんだ。
さて、小学生時代に話を戻そう。
「奇跡の人」で北島マヤが三重苦を見事に演じるシーンがあり、女子達の心をわしづかみにした。
北島マヤごっこを開始するしかないじゃない!
集まった女子全員が交代で北島マヤを演じることになった。一人ひとりが目隠しをして歩く。
ただ、遊びだったので目を隠した状態で歩くことが面白く、キャーキャーと騒いで行う。
これでは北島マヤじゃない、とツッコミが入りそうだが、小学生女子の遊びである。北島マヤと同じに目隠しをする、というだけで満足なのだ。
やっと順番が回ってきて目隠しをして歩く。思ったより見えないことは怖かった。北島マヤってすごいな、と思ったその瞬間。
バーン。
置いてあった植木鉢につまずきそのまま花壇へ倒れた。不運にもそこは祖母が大切にしている場所だった。
「なにやってんだよ!」
「き、北島マヤごっこ」
「わけわからないこと言ってんじゃないよ!オタンコナス!」
「だ、だって目が見えないって……」
「お前の口は土瓶かいっ!言い訳は無用だよ!」
友達が逃げたあと、家の中に連れていかれみっちり怒られた。
この後、しばらく我が家の前での遊びは禁止となる。
時は過ぎ去り高校時代。学校で発熱し保健室で寝ていると、40℃近くなったため返される。
帰ると祖母が驚き、40℃近い孫を一人で返した養護教諭への呪いの言葉を放った。確かに高熱の生徒を一人で返したのはおかしい判断だ。
ただ、母は会社で家には祖母しかおらず、迷惑をかけられないと熱にうなされながら思い、家への連絡を断り、自分だけで帰ってきたのだ。
寝ていると熱は40℃を超え、意識が朦朧となる。すると「若草物語」のベスの気分がフツフツとわいてきた。今、気分は北島マヤだ………。行ける!
「亜弓さん亜弓さんって何言ってんだよ!」
私のうわごとを聞いて祖母は驚いた。のちに頭がおかしくなったのではと、本当に心配したと語っていた。
小学生の頃と違い、祖母は怒らず必死に看病してくれた。
「ガラスの仮面」を知らなかったら心配だよね。ごめんね、おばあちゃん。
でも「若草物語」のベスだったらセリフは亜弓さんではないのか?と思われるだろう。
実は当時、亜弓さんの眉毛に憧れて暇があれば描きまくっていたのだ。高熱により北島マヤと姫川亜弓への憧れがゴチャゴチャになっていたのかもしれない。
熱は2日くらいで無事下がった。
今も元気にグータラと生活をしている。
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