【#創作大賞感想】「残夢」無数にある真実に寄り添う作家・豆島圭
「残夢」の「【第一章】⑥子供」のコメント欄の盛り上がりを見るとわかりますが、多くのファンが再開を望んでいました。私もその中の1人です。
最近「豆島さん、ついてきます」を連発しているものですから、去年の「残夢」の連載が中断された時は、発狂しかかりました。その反面、
豆島さんは絶対、「創作大賞2024」に「残夢」をぶつけてくる
と信じていました。その考えが当たって嬉しいです。
「残夢」再開は私だけの喜びではありません。「第一章⑥子供」のコメント欄がそれを証明しております。
骨太な文章に繊細な描写、男性目線の文章で始まりつつも、女性目線を忘れない、豆島さんの持ち味が多くのnoterの心をつかんで離しません。
真夜中に読み終えたため、最初は堂森を顔パンしてやろうかと思った理由を中心に感想を始めようと思いましが、時間がたった今はそれがなくなってしまいました。
物語は常に、
堂森の偏った正義
近堂の薄気味の悪さ
薫子の異常なこだわり
小学校に漂う微妙な空気
警察を包む不条理
などの絶妙な雰囲気に包まれ、読者をミスリードへと誘います。悲惨な事件や社会への不満の出所、真実をやんわりと隠しながら主人公をじわじわと追い詰める構成は、読む人を恐怖へと誘うかもしれません。
ただ、この物語にはいくつもの真実が詰まっているように私は感じました。
警察内の真実・小さな村の中の真実・男性の真実・女性の真実・子供の真実・大人の真実
そのいずれもが微妙にずれていく過程で精神の平衡が崩れ、悲しい事件は起きます。表沙汰になったものもそうでないものも。
表沙汰にならなかった事件に私はキュっと心が締め付けられ痛みますが、その痛みは更に豆島さんの次の作品を渇望する気持ちへと変化していきます。
それは豆島さんが、現実に無数にある真実を小説に落とし込み全てに寄り添っているからなのです。イヤミスのように感じる「残夢」は豆島さんの優しさがあって初めて生まれる小説なのです。