プリキュアオールスターズF 超分析 プリキュアの本質は精神性と連帯にある!
こんにちは! 今回は、プリキュアシリーズ20周年記念作品「プリキュアオールスターズF」の感想と「プリキュア」の本質について考えていきたい。
プリキュアといえば、もはや、女児向けアニメの代表的存在であるが、そんなプリキュアもついに20周年となり、その節目という事で、今作はなかなか気合いが入っている。
僕も、さすがに今までの全シリーズを追えている訳ではないが、大学生時代にたまたま観た、プリンセスプリキュアの第7話を観てめっちゃ感銘を受けてからは、なるべく現行シリーズを観るようにはしている。そんな僕なりに今作がどういう作品か色々と考えてみた。それでは初めていこう。
あらすじ
ソラが目を覚ますとそこは見知らぬ世界だった。ましろたちとははぐれてしまったらしいソラはモンスターに襲われるも、キュアプレシャスとキュアサマーに助けられる。ソラはゆいとまなつ、そしてプリムと出会って仲良くなり行動を共にする。
一方ましろは小島でローラやあまねと妖精プーカを助け、ツバサとエル、あげはもそれぞれ別の場所で他のプリキュアたちと出会う。しかしそれぞれの記憶があやふやな状況な上に、この世界にいるのはプリキュアだけだということに気づく。
そうした中、遙か遠くに城が見える。元の世界に戻るため、それぞれのチームは団結し合いながら手がかりと思われるその城へと向かうことになる。
○シュプリームのプリキュアの表面的トレース!
まず最初に言及したいのは、今作のテーマとして、「プリキュアとは何か?」という問いがある。 そして、ネタバレをしてしまうと、今作のゲストキャラのシュプリームが、映画オリジナルのプリキュアかと思いきや、実はラスボス枠だったという展開がある。
このシュプリームは、強さを求め続ける宇宙生物で、色んな星の強い奴を倒しては、次の強い存在を探して宇宙を旅する迷惑以外の何者でもないキャラである笑 そんなシュプリームが地球に訪れ、一度プリキュアと戦い、プリキュアを全滅させる。その後、シュプリームはプリキュアの強さに興味を持ち、世界を作り変えて、その世界で自分をプリキュアに設定し、架空の悪役まで作り、それらを倒す。 つまり、プリキュアの活動を形だけ真似る事で、プリキュアの強さの秘密を知ろうとしたのだ。 さらに、シュプリームは、プリキュア達がパートナーの妖精をつれている事から、自分の力を分けて作ったプーカという妖精を作り出す。しかし、プーカは臆病で戦闘では役に立たず、シュプリームはプーカを見捨ててしまう。
このように、シュプリームはプリキュアの強さの秘密を知ろうと、プリキュアの形だけをトレースしてみるが、その本質には迫る事が出来ない。
○「プリキュア」の本質は、連帯(ふたりは)と精神性にある!
では、今作で提示された、シュプリームが理解する事が出来なかった、プリキュアの強さの秘密や、プリキュアとは何か?という問の答えとは何なのか?
実はこれはなかなか難しい問題で、プリキュアとは特に、これがプリキュアだ!という明確な定義がある訳ではないのだ。しかも、プリキュアシリーズによって、プリキュアが何を比喩しているかも違う。 シュプリームがマネしていたように、確かに変身して戦う女の子というのがプリキュアでもあるのだが、それは表面的な事であり、本質ではない。では、プリキュアの本質は何かといったら、それはむしろ精神性の方にあるのだ。
例えば、プリキュア達は、よく「絶対に諦めない」というセリフをいったりするが、そういった困難に対しても諦めず立ち向かえるかや、自分よりも他の誰かを守るという強い信念がある女の子達がプリキュアだという事も出来る。
そして、もう1つは、「1人じゃない」って事である。プリキュアとして戦う中で、仮に心が折れそうになっても、支えてくれたり、辛さを共有してくれ、何度でも立ち上がらせてくれる仲間がいるからプリキュアは強いという事だ。そういった連帯できる強さもプリキュアの本質の1つといえる。だから、今回も序盤に出てくる各シリーズから選抜されたプリキュア達も、やはり、ローラと真夏であったり、ゆいとあまね、のどかとラビリンなど、プリキュアの関係性のなかでも、「ふたり」の関係性が強調されている。この初代のタイトルにもある「ふたり」というのが、今作のテーマでもある。 (しかしシュプリームはそれも間違って理解し、仲間をただの戦力だと思い分身を沢山だして、ましろに呆れられたりしていた笑)
○プリキュアのランダム性が多様な強さを生み出している!
そして、この映画内だと、語られていないのだが、僕が個人的に、もう1つプリキュアの本質を付け加えるとしたら、それは偶発性だと思う。 プリキュアは、別に選ばれるのに、何か基準がある訳でもないし、その時その場に居合わせたかどうかという、偶発性の要素が強い。だからこそ、特性がバラバラな子同士のチームが出来上がるから面白いのだ。 例えば、初代のなぎさとほのかのように、全然性格も好みも違うような子同士が、プリキュアという共通性を持つ事で、友達になる。そういう性格がバラバラであったり、共通性のない、多様な女の子達が集まる事で、お互いの弱点を補完したり、自分にはない新しい価値観を知って成長できるからプリキュアは強いのだ。 要は、プリキュアになる上でのランダム性のおかげで、より多様な繋がりが増えて、強くなれる。これもプリキュアの本質の1つなのだ。(例えば、プリキュアに選ばれるのは強い子とか頭のいい子とか、何かプリキュアに選考基準があるわけではない。ランダムに選ばれるからこそ色んな個性が集まり、多様になる。だからこそお互いの足りない部分を補完出来る。これこそがプリキュアシリーズが20年間繰り返し描いてきた事だ。)
○集団戦として、アニメ史上トップレベル情報量のオールスターバトル!
そして、今作の一番の見所は、終盤のバトルだ。そしてラストバトルへ入る導入の部分も感涙物の素晴らしさだ。 流れとしては、プーカがシュプリームの作った世界を一度バラバラにして、そのバラバラになった世界の中から、かつてのプリキュア達の記憶や思い出を元に、世界を繋ぎ直すというシーンがある。そこが、過去の各プリキュアシリーズの名シーンとともに、世界とプリキュア達が再生していくのだ。 今までのプリキュア達の過去の描写から、プリキュアの強さは1人じゃないから、一緒に戦ってくれた誰かがいるからという事を、各シーンと共に突きつけてくるのだ。これがプリキュアなんだ!という映像が次々に流れ、それと同時にプリキュア達が復活して参戦してくる。この感動は言語化が難しく、とにかく映画を観てもらうしかない笑
そして、全プリキュアが復活してきてからの、プリキュア全員VSシュプリームの戦いはもう圧巻である。プリキュアのオスターバトルといえば、よく使われる手法として、各シリーズ事にOPが流れ、順番に大技を放っていくやり方(DX3やメモリーズ等で使用)もめちゃくちゃかっこよくて好きなのだが、今回はもう人数が増えすぎて、シリーズ事に尺をとっていたら、どうしても間延びしてしまうのだ。なので今回は、完全に色んなシリーズのプリキュア同士をシャッフルさせ、ワンカットの中で大きく動かすというよりは、スピーディーに短いカットを切り替え、とにかく全キャラを映しきってやろうという手法だった。そのやり方でももうプリキュアの人数が多すぎて、多人数の集団戦を描く情報量としては、、現代アニメの中でもトップレベルである。
○プリキュア愛に溢れたシャッフルと役割の采配!
そして、各シリーズのプリキュア達をシャッフルさせて戦わせるのも、例えば、ラメールとマーメイドを人魚繋がりで組ませたり、食がテーマのデパプリと、スイーツがモチーフのデパプリを組ませたり、フォームチェンジがあるまほプリとハピチャを組ませるなど、ちゃんと関係のあるプリキュア同士を組ませていた。このあたりは、本当に制作者側の愛や工夫を感じた。プリキュア愛がなければ出てこないアイデアが戦闘の中にずいぶんと組み込まれていたように思う。 あの人数がみんなを活躍させるように、考え抜かれていて観ていて嬉しくなる。
さらに、今回は戦闘面以外でもキャラの特徴がよく捉えられていた。まひろ達のチームが電車を追っかけるシーンがあるのだが、ちゃんと体力がない設定の、のどかが遅れるなど、キャラの特徴を覚えていてくれて嬉しかった。あと個人的に好きなシーンは、プーカが人間形態(キュアプーカ)になるのだが、その時、プーカの背中を押すために、キュアエールがプーカを応援するのだ。やはり、応援する役目はエールにやらせるという役割の徹底具合はさすがである。そして、モフルンを代表とした、妖精から人間になった事のあるキャラ達が、プーカに力を貸す事もエモい。本当に映画全体の、この役割はこのキャラでしょ!っという采配が素晴らしかった。
そして、プーカの事でもう1ついうと、プーカは自分の力である、破壊する力で人を傷つける事を恐れ、プリキュア達との接触を拒否するシーンがある。そんなプーカに、のどかが手を差しのべ、ふたりが初めて接触するシーンがある。この辺なども、時代性を感じた。現代社会では、あらゆるコミュニケーションがハラスメントの危険を孕み、広義の接触が困難になりつつある。それでも、傷つけ、傷つく事を恐れず、相手に手を差しのべるのどかの姿は非常に美しい物であった。
○シュプリームの「個」としての強さとプリキュアの「ふたりは」の強さ!
そして、プリキュアオールスターズとキュアプーカはシュプリームに勝利する。
しかし、プリキュア達はシュプリームを同じ釜の飯を食べた仲間として受け入れる。そしてプーカはシュプリームにいう。自分という存在を生み出したのは、シュプリームも、心のどこかで仲間を求めていたのだと。
シュプリームは強い代わりに、あくまで「個」として生きている。それに対してプリキュアは、1人1人は、あくまで普通の女の子であり弱さもある。しかし、そんな弱さを持つからこそ、連帯したり繋がる事の強さを知っているのだ。つまり、プリキュアと対比としての、真逆の強さを持っているのがキュアシュプリームなのだ。 そんな「個」としての強さを追求していたシュプリームが、ラストでプリキュア達に受け入れられ、プーカという仲間を得た。シュプリームも、もう1人じゃないのだ。そういう意味では、最後にシュプリームとプーカは「ふたり」になる事で、表面的な事ではなく、真の意味でプリキュアになる事が出来たのであろう。
僕の今作の感想はこんな所だ。しかし今振り替えってみても、非常に上手い作品だったと思う。最初シュプリームにプリキュアの形だけを真似させる事で、逆に真似だけではたどり着けない、プリキュアの本質を鮮やかに炙り出している。この辺の流れなどムダがなくロジカルだ。そして、プリキュアとは何か?という今作のテーマも20周年作品として、ふさわしい物である。現在放送中のひろプリもどういう結末を描いてくれるのか今から楽しみだ。
長文になってしまいましたが、ここまで読んで下さりありがとうございました🙇
プリキュアについては今後も追っかけていきたいと思います。ではまた🙋