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麻雀の市場規模データを更新しました(2022)

先月末に出版された『レジャー白書2023』がようやく届いたので、早速(でもないけど)、麻雀をはじめとする各種レジャーの2022年のデータをまとめました。


0.ファストまとめ

  • 2022年の麻雀の参加人口・市場規模は前年同様に増加。コロナ前の500万人―500億円ラインに戻りつつある

  • 参加人口の内訳は、20代が最多年代となり老人の麻雀離れが進む。女性は全年代で増加

  • 2022年のレジャーの首位は国内観光旅行。男女別では、男性は動画鑑賞、女性は旅行が首位

  • 囲碁・将棋では、コロナ以降、参加人口の減少が続く。今年4月の本因坊戦縮小【囲碁】、10月の藤井八冠誕生【将棋】でどうなるか?

  • 麻雀界へのAIの侵略はそれほど進んではいないが、麻雀AI「NAGA」が存在感を増している

1.麻雀の市場規模データを更新しました

『レジャー白書2023』によれば、2022年のデータは以下でした(調査時期は2023年2〜3月)。
雀荘数については、警察庁のホームページから、「令和4年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯等の取締り状況について」を参照しています。

麻雀の参加人口・市場規模はともに増えており、コロナ禍から順調に回復しています。コロナ前の500万人―500億円ラインに、参加人口は戻せていますが、雀荘ビジネス(麻雀ゲーム料)についてはどこまで回復できるか不透明です。
警察庁発表の雀荘数は、近年は毎年300軒ほど減り続けています。しかし、この数字には廃業届を出していないため営業扱いとなっている店舗も多く含まれているということなので、実際の雀荘数についてはよくわかりません。2023年11月29日現在、「麻雀王国」のカウンターでは掲載雀荘数は3,854軒でした。

2021年にメチャクチャ上がった年間平均費用はやや落ち着きましたが、今度は年間平均活動回数がかなり上がっています。何と、麻雀は「2019〜2022年に年間平均活動回数が増加したレジャー」の2位でした(1位はテニス、3位はヨガ、ピラティス)。頻繁にプレイする人が増えているのはわかりますが、レートはどうなっているのかとか、数字の裏側にある活動実態はいまいちよくわかんないですね。

2.男性は動画鑑賞、女性は旅行が首位

2022年のレジャー市場の規模は、前年比12.7%増加の62兆円とコロナ禍からの回復を見せています。しかし、2010年代は70兆円台で安定していたので、もうひとがんばりというところですね。
『レジャー白書』が分類する4部門では、観光・行楽(前年比31.0%増)が大きく伸び、娯楽(11.3%増)では外食が、スポーツ(7.8%増)ではスポーツ観戦が、趣味・創作(6.0%増)ではシアター系鑑賞が伸びましたが、「紙の書籍と雑誌は大きく落ちた」というところは気になります。全体的に、リベンジ消費というかコロナによる室内生活でたまった鬱憤晴らしの傾向が強くなっています。

レジャー市場規模の推移(1994〜2022)

君たちはどうして部屋から出ないのか

コロナ禍が始まってからは、2020年には動画鑑賞、2021年には読書と、インドア趣味がレジャーの首位を占めてきました。しかし、2022年には、国内観光旅行がコロナ前の2019年以来の首位に返り咲きました。

男女別に見てみると、女性は「1位 国内観光旅行、2位 外食、3位 読書」とコロナ前に戻りつつありますが、男性はあいかわらず「1位 動画鑑賞、2位 国内観光旅行、3位 読書」でした。2019年には、男性も「1位 国内観光旅行、2位 ドライブ、3位 外食」とヒャッハーしていたので、女性と違って今も室内生活を引きずっていることになります。あるいは、男性にかぎってはインドア趣味が定着したと考えることもできます。今後はよりアウトドア傾向が強まるとは思いますが、これは本当に、部屋から出ずに動画ばかり見ていて申し訳ないと謝りたい😭

各種ゲーム・ギャンブルの参加人口・市場規模(2017〜2022)
労働時間・支出とゆとり感指数(2017〜2022)

仕事よりも余暇を重視

コロナ禍が始まった2020年には、余暇時間も余暇支出も「ヒマにはなったがカネがない」と異次元の数値をたたき出していました。しかし、2022年にはいずれもかなり落ち着いています。前年に引き続き、教養娯楽費のうち、モノとしての教養娯楽用品や書籍は増えていませんが、サブスクやスポーツ・文化施設の入場料といった教養娯楽サービスは大きく増えています。
そのほか、「仕事と余暇のどちらを重視するか」という問いに対して、余暇重視派が年々増加しており、2009年には50.5%だったのが、2022年には63.9%になっていました。若い世代になるほど、余暇重視派の比率が大きくなっています。

個々のレジャー

家庭用ゲームについては、PS5の品薄解消により今後の活況が見込まれるのと、ゲームソフトの高額化により市場規模が拡大しています。ゲームセンターでは、風営法の解釈変更により、2022年3月から、プライズ(景品)ゲームに使用できる景品の上限価格が800円から1,000円に引き上げられました。この影響もあって、参加人口は減っても市場規模はコロナ前の水準に戻りつつあります。

パチンコの市場規模は3年連続横ばいであり、厳しい状況が続いています。そんな中、2022年11月にはスマートパチスロが、2023年4月にはスマートパチンコが導入されることで、「初期投資はかさむが、玉・メダルの持ち運びや洗浄が不要になるため、作業負担の大幅軽減と将来的な設備投資の負担低減が期待されてい」ました。
しかし、今年10月の経済産業省の解説を見ると、スマスロによって20代から40代の若い客層が増加している一方、パチンコホールは二極化し大手以外はどんどん閉店しています。その大手もガイアグループがつい先日破綻したので、予断を許さない状況です。

公営ギャンブルはあいかわらず堅調で、特にコロナをものともしない中央競馬は、競馬場への入場が正常化したことでさらに収益を伸ばしています。
宝くじでは、矢継ぎ早に新商品が出ており、2022年4月には新型ネットくじ「クイックワン」が発売されました。スポーツ振興くじでも、これまでのサッカーだけでなく、バスケの試合にも賭けることができる「WINNER」が2022年9月に発売され、売り上げの記録を更新しました。どちらの種類のくじも、参加人口は減っても売り上げは伸びるギャンブル化に拍車がかかっています。

ウマ娘は今も元気に走っているのか?

2021年には1,000億円を超える売り上げを記録したウマ娘はどうなったかというと

オンライン・ソーシャルゲームの市場規模は、前年比2.8%縮小した。コロナ禍のステイホームで受けた特需は終焉し、前年の横ばいから2022年は減少した。そうした中で、『モンスターストライク』『ウマ娘 プリティーダービー』『シャドウバース』『グランブルーファンタジー』『原神』などは、2022年のヒットコンテンツとして注目された。

『レジャー白書2023』 104ページ

『ウマ娘』『シャドバ』『グラブル』は、いずれもオレたちのサイゲ(サイバーエージェント子会社のCygames)が運営するソシャゲです。ウマ娘マネーによって、ABEMAでのサッカーW杯無料生中継が可能になったのは記憶に新しいところですが、2022年もサイゲのソシャゲが3つもヒットしてるなら安心だ、これでMリーグも安泰だわ、と思っていたら

しかし、翌年のウマ娘は2022年に失速します。社長の藤田氏は「ウマ娘は拡大局面から、通常モードに落ち着いていく」とコメントするなど、ウマ娘ボーナスはすぐに縮小していきました。
さらに良くないことに、今年23年5月にコナミがウマ娘による特許侵害に基づき訴訟を起こしているというニュースが報道されます。

「サイバーエージェント株価40%下落…復活の道はあるか?「ウマ娘」「Abema」という2大問題児の命運を長期投資のプロが分析」(2023/09/19)

と不穏なニュースもありましたが、当noteはウマ娘とサイバーエージェントを応援しています!

3.最多年代は20代、女性は全年代で増加

Mリーガーと麻雀人口の年代別比率(2022)

2022年には、麻雀人口の年代別比率に大きな地殻変動が起きています。10〜40代の比率は20代以外は増えたのに対して、50〜70代の比率は減り、かなり若返っているんですね。
これまでは一般のプレイヤーの年代にMリーグも合わせるなら、「もっとシニアのMリーガーを増やすべき」だったのが、2022年は「20代のMリーガーを増やすべき」に一転しました。ちなみに、現在20代のMリーガーは、岡田紗佳プロと中田花奈プロの2人だけになります。

41歳の壁は打ち砕かれたのか?

2023年11月29日現在のMリーガーの平均年齢は40.4歳です。昨年のドラフト時、福地誠先生は、Mリーガーに採用されるには婚活と同様に若さが重要な要素であるとし、「Mリーグには41歳の壁がある」と書いていました。

そして、今年の6月30日に行われたMリーグ2023ドラフトで採用された、7人の新規加入選手の年齢は以下でした。

ドラフト時(2023/06/30)の新Mリーガーの年齢

醍醐さんの指名により、41歳の壁が崩れることになった。
(中略)
醍醐さんは46歳。壁を大きくぶち破ったわ。

7人中3人が40代半ば以上であり、福地先生が書いているとおり、41歳の壁はもはや存在しなくなったように見えます。ちなみに、醍醐大プロは1976年4月21日生まれなので、ドラフト時は47歳でした。

しかし、鈴木大介プロはプロ棋士と2019最強位という知名度・実績を生かしてのMリーグ入りであり、醍醐プロは勇退した近藤誠一プロと親しく後継者として指名されています。そう考えると、フラットに選ばれたのは猿川真寿プロだけとなり、若さを重視する年齢の壁は現在もある気がします。

11年ぶりに20代が最多年代に

2022年の麻雀人口を年代別に見ていくと、前述のとおり、最多年代は20代でした。他の多くのレジャーと同様に高齢化が進む麻雀で、20代が最多だったのはいつになるかと言えば、2011年にまでさかのぼらなければなりません。2012年以降は、ずっと60代・70代が最多年代だったわけで、これはMリーグ効果と言っていいんじゃないでしょうか。ただ、20代が最多になった理由のひとつは、高齢者(特に70代)の麻雀人口が減ったことにあるため、老人の麻雀離れが進んでいるとも言えます。
また、女性は全年代で麻雀人口が増加しています。これは2021年に激減した反動でもありますが、女性全体で126万人と3桁台に復帰しており、近年でもまずまずの数字です。

麻雀の年代別参加人口(2017〜2022)(単位:万人)
男性の年代別参加人口(2017〜2022)(単位:万人)
女性の年代別参加人口(2017〜2022)(単位:万人)

電通様はやっぱり正しいのか?

Mリーグの熱狂はすでに既存の麻雀ファン以外にも波及し、20代~30代の男性では麻雀をやってみたいと思う人(体験意向者)の割合が右肩上がりに上昇しており、確実にその裾野を広げていることが分かります。

「ウェブ電通報」(2022/03/09)

これは、昨年も紹介した2022年3月の電通の記事ですが、こういった流れは現在も続いているのでしょうか。

2022年も、30代男性の参加人口は増加しています。そして、20代男性は2021年と変わらずでしたが、これまで最多年代だった70代男性が激減したことによって、オス界の頂点に立ちました。さらに、参加人口の増加は10代男性(15〜19歳)にまで波及しています。マジかよ……。

4.囲碁・将棋との比較

藤井八冠とMリーガー・渋川プロの比較

麻雀と並んで、国内ではメジャーなテーブルゲームである囲碁・将棋に目を向けると、今年になって、両者には対照的な2つのニュースがありました。4月に報じられた囲碁の著名なタイトル戦・本因坊戦の縮小と、10月にあった将棋の藤井聡太八冠の誕生です。麻雀? 麻雀では、8月に新婚の渋川難波プロがMトーナメントを制しました🤣

囲碁・将棋はコロナ以降減少傾向

麻雀・囲碁・将棋の参加人口の推移を見ると、麻雀は2020年のコロナ禍から復活しつつありますが、囲碁・将棋はずっと減少傾向が続いています。そのせいもあって、囲碁では本因坊戦の縮小に至っており、将棋では今年の藤井八冠誕生によりどうなるかが注目されます。

活動回数や費用を見ると、麻雀・囲碁・将棋はすべて同じような推移を見せています。コロナ以降、かなり活動回数が増え、使う金額も爆上がりしているんですね。実際、「2019〜2022年に年間平均活動回数が増加したレジャー」で、麻雀は2位、将棋は5位でした。特に、囲碁は人数は少ないながら、回数も費用もハンパないですが、「サンプル数が少なすぎるので、この数字は当てにならない」という但し書きがついていました。しかし、この費用の多さは、真剣(賭け囲碁)でもやっているのかと謎は深まるばかりです。

盤上・卓上の30年

改めて、ここ30年の囲碁・将棋・麻雀の参加人口の推移を見てみると

最も高齢化が進む囲碁は、今後伸びる要素があまりないですね。史上最年少の10歳でプロ入りした仲邑菫女流棋聖(14)が、来年3月に韓国に移籍するように、日本の囲碁界全体が活力を失っているように見えます。

将棋は、羽生ブームを見ると、全タイトル独占までは盛り上がっても達成後は人気は右肩下がりになっています。羽生時代は何やかんや2010年代くらいまでは続いていたわけですが、参加人口は減少し、どんどん高齢化が進んでいました。天才のいる風景が日常化してしまったということでしょうか。
藤井ブームにおいても、若年層を含めて参加人口は伸びてはいませんが、今年の八冠達成によって一気に増える可能性があります。また、将棋は、子供と老人という年代の両極端に人気があるレジャーなので、15〜79歳という『レジャー白書』の調査対象の外側で参加人口を伸ばしているのかもしれません。

子供・80代を足した各種ゲームの参加人口(2021)

麻雀も高齢化が進んでいましたが、コロナ以降、若年層の参加人口がガツンと伸びたことでかなりの若返りを果たしています。

『熱闘!Mリーグ』第223回(2023/07/03放送)

こういう「麻雀が子供に人気」という報道も、今まではけっこう斜めに見ていたのですが、考えを改めました。2015年の『レジャー白書』の調査では、ゲーム系レジャーでは5〜14歳の子供人口がワーストだった麻雀も、今ならけっこういけるんじゃないでしょうか。

5.AIの侵略はどこまで進んだか?

昨年の記事では、バックギャモンのように、人間のプレイヤーがAIの奴隷となるディストピア化が麻雀でも起きるのではないかと懸念していました。2023年11月現在、麻雀界へのAIの侵略はどこまで進んでいるのでしょうか。

Mリーグ画面には用語解説が追加

試合中継の画面構成から、AIがその競技にどれくらい影響を及ぼしているかがわかります。Mリーグではどうかというと、待ち牌とアガリ役・翻数に加えて、昨年12月から実況・解説に出てくる麻雀用語の解説が画面上部に表示されるようになりました。しかし、これは人力なのでAIは関係ないですね。

越野智紀さんのポスト(2022/12/01)より

ただし、待ち牌表示はてっきり人間がやっていると思っていたのですが、実際はAIによる画像認識ということでした。じわじわ侵略が進んでいます。

上に貼ったnoteから引用した麻雀AI「NAGA」が解析した数値をはめ込むと、AI侵略後のMリーグ中継はこんな画面になるはずです。震えるぜー。

三大麻雀AIとは

「ウマ娘の三女神」にも匹敵する最強水準の誉れ高い「三大麻雀AI」と言えば、NAGA、Suphx(Super Phoenix)、LuckyJになります。

この3つのAIは、いずれも今やネット麻雀の老舗となった天鳳で十段に到達しています。特に、最後発のLuckyJは、今年の5月にわずか1321戦で特上卓で十段に到達したことでネットの話題をさらいました。安定段位10.68は、AIだけでなく、人間も含めて特上卓で1000戦以上打ったプレイヤーの中で最上位に位置しています。

テンセント声明の翻訳記事の表に到達年月を追加

主に上に貼った記事から、この三大麻雀AIの特徴をまとめた表が以下になります。ここの部分は、冬らしく完全なコタツ記事となっています。他もそうか。

NAGAは、前述のとおり、牌譜解析サービスを通して思考や打ち筋を開陳しています。しかし、Suphx・LuckyJはアルゴリズム等は公開されているものの、現在はいずれも休止しており、具体的な思考や打ち筋は過去の牌譜を見たりNAGAの解析にかけたりして推しはかるしかありません。

洗脳されるMリーガーたち

SuphxとLuckyJは、天鳳十段到達後、麻雀の世界から不完全情報ゲームの戦略が活かせる投資とかそっちの世界に旅立ってしまいました。というわけで、現在、麻雀界に唯一残ったNAGAの存在感が日に日に増してきています。
NAGAとの一致率に言及するMリーガーも何人か出てきており、まだまだAIの繰り出す一手が「正解」とは認識されてはいないものの、意識せざるをえなくなっています。将棋の藤井八冠が手筋の研究にAIを活用していることは有名ですが、麻雀でもそういう時代に入りつつあるんでしょうね。

さまざまなタイプの麻雀AI「NAGA」

逆に、Mリーガーが麻雀AIに影響を与えているケースもあります。人間の麻雀強者を模倣するNAGAにはいくつかタイプがあるのですが、赤坂ドリブンズ所属でトリプル天鳳位(4麻2回・3麻1回)の渡辺太プロを、オメガタイプが100%モデルにし、ニシキタイプが1/3モデルにしていることが最近になって公表されました。

つまり、こういうことですね。

こうなるともう、どっちがどっちを侵略しているのかよくわからなくなってきますね。

ただ、AIに洗脳されそうになっているMリーガーは確かに存在します。たとえば、渋川プロの最近の配信は、「渋川難波改め、渋川NAGAになる配信」という「長いものには巻かれろ」と言わんばかりの目を疑うほどAIに忖度したものでした。こういったMリーガーが出始めているということは、いよいよ人類の未来は危ういと警鐘を鳴らして、本記事を終えたいと思います。

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