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魔法のような
独特な形が美しいアルメニア文字。
その文字によって成るアルメニア語は、一言語一語派を形成する言語。どの言語群にも属さない独立した言語ということらしい。
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アルメニア文字は、404〜406年にメスロプ・マシュトツ(Մեսրոպ Մաշտոց)という人物によってギリシア文字や古代シリア文字などを参考に創り出された。この功績によって彼は聖人といわれている。
言語はそれを使う人の一部をつくるように感じるけれど、アルメニア文字ができたことによって、この文字が人々のアルメニア人としての意識を支えてきたのだろうと想像する。
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ちなみに、アルメニア語には東アルメニア語と西アルメニア語があり、本国で使われているのは「東アルメニア語」。
実はアルメニアの特徴のひとつに、「ディアスポラ(離散民)の数が多い」ということがある。このアルメニア共和国外部に住むアルメニア系移民の間で用いられているのが、西アルメニア語なのだそう。
アルメニアのディアスポラの人々は、母国から離れて暮らしていてもアルメニア人としての意識を保ち続けている。そのことについても、独自の文字を持つこのアルメニア語が大きな力になっているのだろう。
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舌の使い方から受ける印象なのか、なめらかに、転がるように発話される人々の言葉はやわらかく心地いい。
特に好きだったのは、「Շնորհակալություն(シュノラカルトゥン)」。
滞在中ほぼ毎日使っていたんじゃないかと思う、アルメニア語の「ありがとう」。
シュノラカルトゥン。シュノラカルトゥン。
魔法のような響きだと言っている人がいたけれど、本当にそうで。まじないのようなこの言葉を唱えていると人々は笑顔になってくれ、まるで本物の魔法のように、私と目の前のその人との距離を少し近づけてくれた。
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