#8 マスターのおすすめはミートソースのパスタ。訪れる度食べていた。彼女の大好物でもある。10分位すると運ばれてきた。わぁーと眼を輝かせて見つめる彼女。ごゆっくりと言い後にするマスターに感謝の意を伝え、食べようかと促す。程よい塩が効いたパスタに特製ソースが相まっていつも感動する。
#4 訪れたのは近くの工房。丁度風鈴祭りを開催していた。夏の南風に反応して風鈴たちが共鳴する。彼女は一つ一つデザインと音色を聴き比べながら廊下を進んでいく。どうやら気になった風鈴は購入できるらしい。30分ほどの格闘の末、決めた!と嬉しそうに駆け寄ってきた。なんと満足な笑顔だこと。
#7 やぁとマスターはいつも通りの挨拶。窓辺の1番奥のテーブル席に向かい合って座った。喉渇いたねーと運ばれた水をゆっくり飲んで早くもリラックスモード。メニューは置かないでもらったので、マスターに目で合図を送る。なーんだ予約してたんだねと一言。こっちの動きに気づいていないようだ。
#9 ふと彼女を見ると涙が溢れていた。どうやら亡きお母さんが作ってくれた味と瓜二つらしい。予想外の展開にマスターも驚きを隠せない様子。僕は彼女が食事を終えるまで何も話せなかった。ただ彼女が過去を懐かしむような嬉しさを含んだ顔をしていたのを今でも思い出す。本心は知り得ないけれど。
#6 車中の彼女はいつにも増して笑顔だった。どこに吊るそうかなぁとか配置の構想を練りながら何食べるの?と聞いてくる。薄々勘づいてはいるようだが。やりとりをしている内に目的地に到着。訪れたのは小さな喫茶店。ほーと渡辺篤みたいに外観の感想を述べながら歩き回る彼女。落ち着け落ち着け。