米原子力規制委員会が、敦賀原発2号機問題に対応したとすれば、原子炉直下の活断層らしき存在の有無の問題視だけではなく、確率論的リスク評価を行い、活断層として、保守的定量的評価をした時に、原子炉建屋にどれだけの影響が生じるか、工学的影響解析を実施し、yesかnoの判定をするはずです。
(続き)解析結果は、ただ、数字を示すだけでなく、発生確率との関係で論じなければならず、「確率論的リスク評価」の研究実績がなければならず、特に、新規制基準審査に合格し、再稼働した原発の「確率論的リスク評価報告書」をすべて解読した実績がなければならず、原著論文や著書があれば理想的。
Trovatoreさんから、「原子力規制委員会は、原発周辺のリスクとなる工場の影響なども審査するそうですが、PAC3の原発への誤射なども審査するのでしょうか」なるコメントあり。PAC3装備は、具体化していないため、審査対象でなく、将来、誤射が、確率論的リスク評価対象になるか不明。
世界の主要な解析法になっている確率論的リスク評価は、1960年代後半、ミサイル発射・制御システム系の信頼性向上、NASAのロケット打ち上げ信頼性向上、72-74年、米国原子力委員会は、原発の炉心損傷事故発生確率の算出に採用しました(AEC ; WASH-1400(1975))。
世の中では、確率論的リスク評価に対し、スリーマイル事故の発生確率を正しく算出できなかったとか、福島第一事故を正確に予測できなかったとかと誤解していますが、あくまでも想定条件内での解析結果であり、想定できないことには対応できないことは、当たり前で、誰も、未来の出来事を知りえません。
確率論的リスク評価は、原発の標準状態(定められた健全なシステム)で、想定された条件下の解析で(戦争は起こらない、南海トラフ地震で目覚めたシンゴジラは上陸しない、UFOから攻撃されない)、未来予測でもAI機能的解析でもなく、想定条件から外れた事象が加われば、結果は、大きく外れます。
確率論的リスク評価は、サイコロを振って、事象の発生確率を求めるのではなく、工学的システム解析として、システムモデル化のイベントツリー法(Event Tree)とフォルトツリー法(Fault Tree、機器故障データべス利用)に拠り、個々の事象の発生確率から、全体を算出します。
米国原子力規制委員会は、約10年間の技術開発後、1980年代半ばの米国の確率論的リスク評価を採用し、五基の原発の炉心損傷事故発生確率の算出を行いました(NRC ; NUREG-1150(1990))。日本では、80年代に原研、80年代半ばから安全解析所や電力会社で実施。