◆文化の基盤資源の範型イメージ 「ほぼ二千巻にもおよぶ異端裁判の記録が順序正しく完全なかたちで保管されてある収納戸棚に囲まれた大きな部屋にわたしが初めて足を踏み入れたとき…」(カルロ・ギンズブルグ「人類学者としての異端裁判官」『歴史を逆なでに読む』132頁,みすず書房)
◆ある主体とある基盤資源との緊密良好な具体的関係性に「占有」による保護シールドを提供しなければならない。他方、基盤資源(全部やその一部)の移動や交換がすべて否定されるわけではなく、占有は現状絶対維持の観念ではない。厳密透明な議論(取引含む)に基づき再布置しより良質な関係性を作る。
◆入り組んだ諸基盤資源の網の目.基盤資源は例えば各個人や諸企業、当該家族、ある地域や文化圏(漢字文化圏、日本語)、近代科学・技術・知識共有圏などが有し(専有したり共有し)ているところ、各基盤資源は横にも縦にも複層的に絡み合い、それぞれがそれぞれに貢献したり養分を得たりしている。
◆費用果実連関の動態はとりわけ基盤資源の構造や駆動態様あたりが捉えにくく、そのため、定量化できずに時にないものと考えたり、費用や果実の方だと勘違いしたりする。もちろん流動する側面もあるのでその時的側面や文脈での切り取り方にもよるのであるが、現実を掴みきっていく眼が求められる。
◆基盤資源はいわば「元手・モトデ」である。あるものが費用・基盤資源・果実のいずれであるかは抽象的には決まらず、文脈や視点にもよるし流動もする。土地、資金、財、身体能力、知性、知識・技術、歴史そのもの、蓄積された文学等々。開かれているもの、閉じられているもの等々。
◆基盤資源は、財・サービスという対価を要する取引対象物を生み出す源とみれば、経済的視点での「果実」という商品産出源となる。これが重要であることは論を俟たないが、「果実」を大きく捉えれば、基盤資源は価値創出源とみることができ、その場合は狭義の経済的視点に限られない考察対象となる。
◆自由なる個人その経済のために、費用果実連関(費用→基盤資源→果実)の理解 ・費用と果実は比較的すぐに消滅し、基盤資源も消滅するがタイムスパンが原則としてまるで違う。形成にも時間を要す。 ・基盤資源は危険なことに切り崩して費用にすることもできてしまう。 ・開かれた基盤資源もある。