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マネージャー不在の組織は機能する?  元VPoEから見たUbieの実態


はじめに

2024年7月1日から、Ubie で働いている橋山です。社内でのニックネームは ojiki(おじき)です。最初の職場でのニックネームは「Papa」でしたが、より貫禄のある呼び名に変わりました。

これまでは EM/VPoE として、ピープルマネジメント、プロジェクトマネジメント、リソースアロケーション、採用、組織開発など幅広い責務を担っていました。Ubieでは「Engineering Organization Lead」という肩書きで同じような領域を担当していますが、仕事の進め方はかなり異なっています。

Ubie への入社を決めた主な理由は、ホラクラシー組織の採用、マネージャー不在、そして報酬に紐づかない評価システムという独特な組織に強く興味を惹かれたからです。10年以上にわたる階層型組織でのマネジメント経験を通じて、評価と報酬の決定、そしてそれに関連する人事・組織の課題に多くの労力と時間を費やしてきました。そして自分自身、会社全体の方向性を統一するためにはマネージャーと評価・報酬制度は不可欠だと考えていました。

しかし、Ubie の組織について知るにつれその実態を自分の目で確かめたいという思いが強くなりました。事業内容やメンバーの魅力も相まって、入社を決意しました。本記事では、マネジメントの経験者の視点から、入社5ヶ月で見えてきたUbie組織の実態をお伝えします。

ホラクラシー組織におけるマネジメントとは?

ホラクラシーについて

ホラクラシーを理解する上で重要な点は以下の2つです:

  • 意思決定や権限を個人ではなく役割(ロール)に紐づけ分散させる仕組み

  • 一般的な誤解と異なり、ホラクラシーはフラットな階層構造ではない

ホラクラシーでは、従来の個人に紐づく様々な業務を全てロールに分解します。個人が複数のロールを担当したり、複数の人が同じロールを共有したりすることも可能です。

ロールの例:

  • プロダクト開発・運用

  • プロダクトオーナー

  • スクラムマスター

  • コスト管理

同じロールを持つ人々の集合をサークルと呼びます。多くの場合、会議やスクラムの運営はこのサークル単位で行われます。

重要な点として、ホラクラシーはフラットな構造ではありません。サークルは親子構造を持つことができ、組織の成長に伴って階層構造を形成します。Ubieの場合、全社的に見て3-4段階の階層構造があります。

ロール・サークルの階層構造を示した図


ホラクラシーにおける意思決定プロセス

ここでは、従来の組織構造を比較のために「階層型組織」と呼びます。

ホラクラシーでは、意思決定は基本的に各ロールで行われます。階層構造があっても、必ずしも上位サークルの承認が必要というわけではありません。

階層型組織とホラクラシー型組織の違い


例えば、部署横断でオンボーディングプロセスを改善するというケースを考えてみます。

階層型組織の場合:

  • 直属のマネージャーに変更案を相談

  • マネージャー経由で他部署と調整

  • マネージャーの承認後、プロジェクトを開始

階層型組織における意思決定プロセス

このような流れになるのは、階層型組織では業務の進め方やリソース配分の責任と権限がマネージャーにあるためです。

一方、ホラクラシー型組織の場合:

  • オンボーディングロールを持つ適切なサークル・有識者に直接相談

  • 担当者が自ら優先順位を判断

  • 決定後、特別な承認なしに変更を実施

ホラクラシー型組織における意思決定プロセス

ホラクラシーでは各ロールが課題解決の責任と権限を持つため、このようなプロセスが可能になります。

大きな影響を及ぼす場合は、サークルリードや関係者に相談することもありますが、最終的な意思決定の責任と権限は個人にあります。

ホラクラシーの詳細については、以下の記事も参考になります(一部情報は古いですが、基本概念は変わっていません)

以下では、Ubieにおける具体的なマネジメント機能として、リソースアサインメント・人材開発の2点について実際の運用方法をご紹介します。

Ubie におけるマネジメントのやり方

リソースアサインメント

Ubie では、リソースアサインメントの基準となる優先順位を、ケイデンスとOKRを基本として決定しています。

四半期ごとに、エクイティストーリーや事業計画を担当するロールやサークル(一般的に経営層と呼ばれる)が、関係者を巻き込みながらOKRを策定します。

同時に、このOKRを達成するための最適なガバナンス (*) も検討します。この過程で、既存のサークルの変更や、新たなロール・サークルが作られることもあります。

(*)ガバナンス: ホラクラシー用語。サークルの組織構造を意味する。サークルの責任・権限の範囲、所属するロールや会議体などのコミュニケーション設計を含む。

更新されたサークルやロールの枠組みの中で、各サークルのリードが中心となって優先順位やリソースアサインを決定します。サークルを超えた調整が必要な場合は、他サークルや上位サークルのロールと協議しながら決定します。

階層型組織とホラクラシー組織におけるリソースアサインの違い

(*) サークルリードとマネージャーの主な違いは指揮系統権の有無です。サークルリードは役割の割り当てやリソース管理の責任を持ちますが、メンバーへの直接的な命令権はありません。

具体例として、OKRを推進するための新規開発を行うチームを組成する必要があるとします。

前職までであれば、まず私が要件に基づいて必要なスキルやチーム構成を考え、各チームと調整しながらメンバーをアサインしていました。場合によっては、他チームからメンバーを異動させたり、新規採用を検討します。最終的な決定権は私と各チームのマネージャーが握っており、トップダウンでリソースアロケーションが行われていました。

しかし、Ubie では、その領域に最も相応しい人が自主的にロールやサークルを作り出しリードとなります。そしてこのサークルに必要なメンバーを他のサークルやロールと調整しながら集めます。私は横断的に色々なメンバーに関する情報を持っているので、個人の Will / Can をベースにして候補を提案したり交渉を手伝ったりしますが、最終的なリソース調整はロール同士・サークル同士で意思決定されます


人材開発(目標設定・フィードバック)

Ubie の人材開発アプローチは、組織の成長に合わせて進化しています。以前は評価自体を行わない方針でしたが、現在は組織規模の拡大に伴い、人材開発を目的とした目標設定とフィードバックの仕組みを導入しています。ただし、評価を報酬と直接紐づけていない点は変わっていません。

現在は、Netflixの能力密度 (talent density)という概念を参考に、Ubie独自のフィードバック方式を実現しています。Ubie には従来の意味での上司やマネージャーがいないため、基本的には下記の Self-Development Policy に基づき自己能力開発を実施します。

これを踏まえて、人材開発のプロセスは以下のように進めます。

  1. 目標設定: メンバーは事業戦略やOKRをもとに、達成すべき目標や担うべき期待役割、そのために自身が伸ばすべき能力(Ubieness/U-map)を自ら決定する

  2. 伴走ペアの決定: 目標の客観性と妥当性を担保するため、以下の条件を満たす人物が「伴走ペア」としてアサインされる

    • 人材開発のロールを明示的に担っている

    • 同じサークルに所属しており、U-mapにおいて「戦略策定・操舵力」に強みを持っている

  3. フィードバック: 伴走ペアは、1on1ミーティングなどを通じて定期的なフィードバックを提供し、継続的な成長と目標の調整を行う

従来の階層型組織では、人材開発は主に組織マネージャーとHRが担当しますが、Ubie では専門のロールやサークルを各部署内に設置し、人材開発をサポートする機能を分散させています。

ここでも、具体例として、とあるエンジニアの能力開発を考えてみます。

前職までであれば、私やマネージャーが毎週各エンジニアと1on1を行い、 フィードバックを実施していました。目標設定や評価、昇進・昇格についても、私が最終的な決定権を持っていました。また、各エンジニアの能力開発についても、本人の Will / Can をベースとしつつも、組織で定めたキャリアラダーや組織体制に基づいて、私やマネージャーが決定していました

しかし、Ubie ではエンジニア自身が主体的に能力開発を行うことが求められます。エンジニアは、U-map を参考に自身のスキルセットを評価し、伸ばしたいスキルやキャリア目標を自ら設定します。私自身も伴走ペアとして所属サークルメンバーの目標設定のサポートやフィードバックは実施しますが、それも他のメンバーと分担です。また、人材開発ロールとして、組織全体の能力向上を意図した議論は行いますが、その人の能力開発に責任を持つわけではなく、サポートや仕組みづくりに徹します

マネージャー不在の組織の良い点・課題点

ここまでの内容をもとに、マネージャー不在の組織で5ヶ月働いてみて、私が感じた良い点と課題点をまとめます。

マネジメントから見る良い点・課題点

リソースアサインメントの観点では、リソース調整のリードタイムや機会損失コストがコミュニケーションコストを上回る場合、ホラクラシー組織はより効果的に機能すると言えます。一定の組織規模を超えるとこのメリットが逆転するため、Ubie ではこのトレードオフを見極めながらどのように組織を成長させるか考えています。

人材開発の観点では、自らのキャリアを自己決定できる(=マネジメント不要)ことを採用要件の1つとすることで担保しています。しかし、人間誰しもがライフステージの変化などやむを得ない事情でキャリアを見直す局面はもあるでしょう。あくまで人材開発の主体は本人に置きつつ、それをサポートする制度(伴走ペアへのフィードバックトレーニング、コーチング等)を拡充しています。

重要なのは、マネージャー不在の組織にはメリットだけではなく、トレードオフとなる課題が存在しており、それを解決するための様々な仕組みや改善が必要なところは他の組織と同じであるところです。

最後に

ホラクラシーという外から見るとイメージしづらい組織構造について、主にマネジメントの観点から実例を交えて紹介しました。ホラクラシーを用いて Ubie がどのように日々の組織運営に向き合っているのかが少しでもイメージできれば幸いです。

ここでは紹介しきれなかったホラクラシーの特徴や、Ubie の人材・組織開発のアレコレなどに興味がある方、また、このように裁量の大きい組織で実際に働いてみたい方はぜひ以下の採用サイトからカジュアル面談を応募いただくか、以下の採用サイトから応募ください!

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