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失敗を愛する技術。
中学3年生最後の試合を機に、私は大好きだったはずのサッカーを辞めてしまいました。
原因として思い当たるのは、副キャプテンという立場にかかわらずチームの中で孤立してしまった経験が大きかったと思います。思春期だった当時の自分にとっては結構きつかった覚えがあります。
今から考えてもこの決断は失敗だったなと思うのです。正直今でも、サッカーをしている夢を見たりします。もし続けていれば…。なんて思ったりします。
しかし、決して誰かを恨んでいるとかそういうことを言いたいわけではありません。この決断をしたのは紛れも無く自分自身であったと今なら思えます。そしてその決断があったからこそ、今の自分があるのだと思えています。
思い出して心地がいいわけでは無いのですが、あの時に感じたことや苦しんだ経験というのはスポーツメンタルコーチとして活動する自分にとって、本当に大切なものになっています。なぜなら、選手が苦しい思いをしているときや、競技をやめたいと思う時にも、その気持ちを想像することができるから。そんな経験をしたからこそ、相談を受ける立場に立った時に冷静に考えることができます。
過去の失敗を受け止め、そこから学んだからこそ今がある。10年も前の失敗が今の自分に生きているのです。あの時の未熟な自分は今の自分にとっては、とても愛おしいとさえ感じるのだから不思議です。
失敗というのは一般的にはネガティブなものと捉えられがちです。失敗した時の「うわ、やっちゃったよ」という恥ずかしさや、「もっと練習しておけば」という後悔は、不快な感情として意識に上ってくるからです。
しかし、一方で長い競技人生を考えた時に、失敗を単なるネガティブなものとしてしか捉えていないのは、非常に勿体無いのです。
失敗することって悪いこと?
選手とのコーチングをしていて、自分の失敗を認められない選手がいました。たまたま調子が悪かった、指導者に何を言われた。そうやって自分の外に失敗の原因を求めてしまい、改善すべき点から目を背けてしまうのです。
もちろん本人は一生懸命やっています。ただ、それが無意識に行われてしまうのです。自分では気がつかないうちにそうすることが癖になってしまっていたりします。
そんな選手と深く深くコミュニケーションを取っていると、「失敗」に対するイメージがものすごく悪いものだったりします。それこそ、誰かに怒られたと言うようなネガティブな経験がその核になっていたりするのです。
失敗を悪いと思いすぎるのは、自分自身が失敗をしてしまったことを無意識に覆い隠し、その経験に蓋をしてしまうことにつながります。それが私たちにとっての絶好の学ぶ機会になるとは知らずに。
しかしそうすることで、自分自身の成長する伸び代を奪ってしまっているとしたら…
その先どんな結果が待っているでしょうか。少しだけ想像していただきたい。
失敗というのは、一つの結果の一側面にすぎません。
失敗に落ち込んでしまうのは、悪い面だけしか見ていないから。だとすれば問題は自分自身の捉え方にあります。物事には常にいい面と悪い面が存在しているのですから。それはちょうどコインの裏表のようなものです。
これまでの人生で失敗から学んだ経験はどんなものがありますか?
いい失敗があるとしたらどれはどんな失敗だと思いますか?
まずは、失敗に対する自分の認識を変えてみることをお勧めします。見方を変えることができれば、同じ出来事も違った形に見えて来ます。
失敗する人だけが知っていること
世の中の一流と呼ばれる人たちも、多くの失敗を重ねて来ています。しかしそんな中でどうして心が折れずに、大きく成長できたのか。
多くの失敗を乗り越えてきた人たちが自分の中で創り上げる信念があります。いったいそれはなんだと思いますか?
それは
「失敗しても大丈夫」
という信念です。
何度も起き上がり、乗り越えてきた経験は「自分には失敗から学ぶ力がある」という自信につながります。そんな自身があるからこそ、失敗しても立ち上がればいいという心構えができるようになるのです。
私が通っていた中学校は全国でも有数の柔道名門(先生も超怖かった…)。体育でも柔道の授業がありましたが、まず最初に習ったのは「受け身」でした。徹底的に転び方を教わった覚えがあります。おかげで、私が知る中で授業中に大怪我をした生徒はいませんでした。
"七転び八起き"という言葉があるように、転ぶ度にまた立ち上がればいいのです。
失敗したことに焦ったり、不安になる必要はありません。自分のペースで少しずつ改善を重ねていけばいいのです。目の前の小さな結果から学べることに集中し、自分という樹が成長するための養分を与えることが重要なのです。
小さな失敗を改善し続けると、この程度なら大丈夫だなという時が来ます。その時に、次のステップに挑戦すればいいのです。「改善慣れ」をすることができればそのペースは勝手に早くなっていきます。焦る時ほど、じっくりと回り道をしていいのです。
失敗を愛するということ
心理学者エーリッヒ・フロムの名著に『愛するということ』という一冊があります。
私はこの本が大好きなのですが、この本の第1章はとある印象的な一文から始まっています。
”愛とは技術か。技術だとしたら、知力と努力が必要だ”
技術である、というのはその方法を学び、伸ばすことができるということでもあります。この本では愛するということを知り、実践の中で訓練すべきだと書かれています。同じように「失敗とは何か」ということを知ること「実際に失敗する」という経験をすることが重要なのです。
愛そうというのは「大好きになろう!」というようなポジティブシンキングとは違った感覚です。失敗ということ自体は心地よいものではないでしょうし、同じ失敗を繰り返すということには成長がないからです。
ここでの愛想というのは私たちは過去の失敗の存在を認め、そこから意味や学びを見出し、感謝して乗り越えること。過去の失敗経験は見方を変えることができれば、活かす方法は必ずあります。
「あの時の失敗にはどんな意味があったのだろうか?」
「これからに活かすためにはどんな方法があるだろうか?」
すぐには答えが出なくても、問い続けることで見えてくるものがあります。
これは才能ではなく姿勢と技術の問題です。このような姿勢を自分の中に少しずつ育て上手につきあう力を伸ばすことができれば、これから先に起こる困難にも勇気を持って立ち向かうことができます。
To learn to succeed, You must first learn to fail.
成功を学ぶためには、先に失敗について学ばなければならない。
この言葉は、バスケットの神様と呼ばれるマイケルジョーダンの言葉です。
アスリートとして重要なことは「いかに自分の能力を高めるか」。そこには自分の能力を少し超えたところにあるチャレンジが付きまといます。
偉大な成果を残したアスリートこそ、このような姿勢を持っていたと考えると私たちは失敗に対してどのような姿勢を持つべきでしょう?
失敗を活かすも、腐らせるのも、僕たち次第です。
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スポーツメンタルコーチとして、アスリートのメンタルサポートをしています。自己紹介はこちらにありますので、もしよければご覧ください。
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