今年10月から改正!それでも節税効果が大きい「経営セーフティ共済」
皆さま「経営セーフティ共済」をご存知でしょうか?
事業を長くやられている方でも、意外と知られていない制度の一つでもあります。
万が一の経営の備えとしておすすめの制度ですし、また、個人事業主、フリーランス、法人設立した方である程度事業が軌道に乗ってきた方向けの王道の節税対策でもあります。
今年10月に厳格化の方向で制度改正が行われますが、それでも利用するメリットが大きい制度です。どんなメリットがあり、なにが改正されるのでしょうか。
シリーズ「犬も歩けば税に当たるー経営者なら一度は悩むことー」では、日常で疑問に感じつつスルーしがちな税のアレコレを解説しています。
経営セーフティ共済とは
制度の概要
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)とは、取引先が倒産することにより中小企業の連鎖的な倒産が生まれたり、著しい経営難に陥ることを防止するための制度です。
取引先の倒産や経営難などで売掛金が回収できなくなったとき、最大8,000万円まで無担保・無保証人・無利子で借り入れることができます。返済期間は金額によりますが5年から7年です。
「無担保・無保証人・無利子」とは、かなり優遇されていますね。
借り入れできる金額上限
借り入れできる金額は、経営セーフティ共済制度へ納めた掛金の総額によって決まります。上限金額は、掛金の10倍まで。つまり100万円の掛金を納めていたら、1,000万円まで借り入れることが可能です。ただし上限金額が決まっていて、総額800万円までとなっています。つまり、借り入れできる金額上限は8,000万円です。
掛金は毎月5,000円~20万円まで自由に選ぶことができ、増額・減額もできます。仮に800万円まで最短で掛けたい場合、毎月20万円で40カ月間納付続けることになります。
【節税ポイント】掛金を経費計上できる
なぜ節税対策になるかというと、掛金を損金・経費として計上できるからです。毎月20万円の掛け金を支払っていたら、20万円が経費にできます。
「納付した掛金は戻ってくるの?」と思った方、安心してください。戻ってきます。掛金を12か月以上納めていれば掛金総額の8割以上が戻り、40か月以上納めていれば、掛金全額が戻ります。つまり40カ月以上納付していれば、全額が戻ってくるうえに、掛金の10倍まで優良条件で借り入れ可能になります。
お金を減らさずにリスク対策をしつつ節税対策になる、とても有難い制度なのです。
令和6年10月1日からの制度改正
制度改正の内容
改正内容とは、「経営セーフティ共済を解約してから再加入する場合、再加入してから2年間は納付する掛金を損金・経費計上できなくなる」というものです。3年目からは通常どおりの制度を利用できます。
なぜ改正されることになったのか
「せっかく積み立てたのに、解約する人なんているの?」
「そもそもなんで再加入するの?」
と思った方は多いのではないでしょうか。実はこの制度を利用して、過度に節税対策をする人が増えたことが背景にあります。
こちらの図をご覧ください。経営セーフティ共済の継続加入年数を平成20年と令和4年で比較したものです。
平成20年は長く利用している人が多かったのが、令和4年は3~4年で解約する人が急激に増えています。全体の33%が3,4年目に解約しているそうです。
つまり、節税目的のみで利用する人が増えた、ということです。例えば、上限金額800万円まで納付したらそれ以上は納付できません。そうなると損金・経費計上もできなくなり、納税対策はできなくなります(というよりも、納税対策の上限に達する)。
「上限まで達したら解約して、また0から掛金を納付して節税しよう。それを繰り返そう」と考える人が増えたのです。
この制度の目的はあくまで、中小企業の連鎖倒産や経営難の防止です。中小企業がこの制度を積極的に利用し、世の中を安定化させるために、国は「節税に使える」インセンティブを用意して制度利用を後押ししました。しかし本来の目的に沿わない利用のされ方が目立ってきたので、国は制度を厳しくする方向に動いた、ということです。
制度を利用できない場合や注意点
大企業は利用できない
経営セーフティ共済を使えるのは、中小企業者です。また医療法人や農事組合法人、NPO法人、 外国法人など、法人によっては利用できない場合もあります。こちらに記載された要件を満たすか、念のため確認しましょう。
夜逃げや内整理のケースには適用できない
取引先の倒産などに適用できる本制度ですが、取引先が「夜逃げ」したときや「内整理(支払い能力不足に陥ったとき、債務者と債権者の間で相談し、政務減免などを内々で決めること)」といった、法的に立証できないケースの場合、所定条件で借り入れができない場合があります。
その他、細かい条件はあるので、事前チェックが必要です。
さいごに
いかがでしたでしょうか。
経営セーフティ共済はとても便利でメリットが大きい制度なので、制度の主旨に沿う範囲内でのご利用をお勧めしています。
とはいえ、細かい確認事項があったり、実際に利用する際の手続きは面倒だったりもします。
そんなときは、税理士に頼っていただけたらと思います。
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