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オリパラと文化プログラムが終わる

まさゆめ

7/12に東京都へ緊急事態宣言が発令され、どうやらそれでもオリパラは開催されるらしいという、嘘みたいな状況に困惑してマスメディアの情報から距離をとりつつあった7/16の朝。

起きてすぐ何気なくYouTubeを開いた時に、この別の意味で嘘みたいな風景が目に飛び込んできて、オリンピックもそれに合わせて行われる文化プログラムもいよいよ「本番」だという実感が逆に、じわじわとわいてきた。目のステートメントはコロナ禍を受けた内容に書き換えられていた。

自分が秋田にいたからなのか、メディアを通した体験だったからなのか、文化プログラムや目に期待していたのは「こういうことだったのだろうか」という問いが自らの中に立ち上がる。

もっとリアルな感動を体験できる機会を(無意識ながらどこかで当然のように)期待していたし、オリパラと文化プログラムはいい意味でそれぞれ別物として体験したいと思っていた。嘘みたいな状況と風景が、自分の中で変に結びついてしまったのだ。

そして「画面で見ちゃったな」という何となく損をした気分と、コロナ禍だしこういう体験も貴重だったのかも、という複雑な気持ちが渦を巻く。目なら「それ(画面上での体験)は自分ならではの体験」だと言ってくれるのだろうか(9/5に行われたオンライン報告会ではそう言ってくれていた)。

この感覚は、巻き込まれないと見えない世界がある一方で、巻き込まれると見えなくなるものもあるアートプロジェクト体験の違いに向き合う悩みと似ている。いずれにしても、アートプロジェクトと捉えられるか否かの前に、よくわからない「パブリックプロジェクト」の目撃者をとてつもない人数、生み出してしまったチーム力には最大限の拍手を送りたい。


オリンピック開会式

翌週。いろんな人が言っているけど、本当に全ての歯車が悪い形へ綺麗にはまったようにしか見えなくてびっくりした。何事も無意味はないと前向きに捉える派の自分でも流石に腹が立った。いくら使ってこれなのかと。

延期による規模縮小をもっと徹底して行うことができなかったのか。いっそ入場行進だけでもよかったのではないか。そこに(そうできなかった構造に)敗因がある。


パラリンピック開会式

素直に大興奮だった。ステージアドバイザーをしていた栗栖良依がこれまで試みてきた知見やネットワークが存分に生かされていた。ちゃんと作品になっていたことはもちろん、健常者/障害者、プロ/アマ、自分に身近な人/そうでない人が本当に入り混じってステージをつくりあげていた。

オーディションで選ばれた無名の主役の少女と、パラトリやSLOW LABELで自分たちが何度も撮影してきた人たち、布袋寅泰のギターやTwitterでたまに見かけていた女子高生ベーシストや蓮沼執太が同じステージに立つ作品は自分の想像を大きく越えていた。

ディレクターのウォーリー木下の力はもちろんあるのだろうけれども、振付家、アクセスコーディネーター、アクセスマネージャーなど制作チームのクレジットには、ご一緒してきた人々の名前も並ぶ。

関わる人は皆、ゴールが見えない中で苦しかっただろうし、批判を受けたりもするのだろう。しかしこの状況の中で見事にやりきった。ここにはまっとうなクリエイティブの世界があったのだと思う。

勢いで、SLOW CIRCUS PROJECTのドキュメンタリーも見直す。パラトリにはじまり、SLOW MOVEMENTなど栗栖さんやSLOW LABELが核となって取り組んできた取り組みを2014年から現場を共にしてきた矢彦沢和音がまとめたとんでもない力作。

昨年のコロナ禍で、自分が秋田の仕事をすることが決まってから制作が決まったので、過去に撮影した素材の整理や提供程度しか手伝えなかったけど、ぜひ多くの方に見ていただきたい。

閉会式はこの歩みがあってこそのスタートだったとわかるだろうし、横浜にレガシー残しまくりだということ、アートプロジェクトのドキュメント・アーカイブへ長期的に関わる面白さと難しさも感じてもらえるのではないかと思う。


リレーする墨田の活動

9/4パラリンピック閉会式前夜。24:00から早朝5:00過ぎまでTOPPING EASTによる隅田川怒涛「天空の黎明」のオンライン配信。おそらくコロナが収束していればリアル開催も検討していただのだろうけれども、事前収録映像、東京スカイツリーでの無観客レクチャー、ライブを交えた見事な音楽と言葉のプログラムだった。

TOPPING EASTがこれまで取り組んできた市民プログラムの成果あり、リサーチベースの音楽にとどまらない映像作品、深夜という設定。稲葉俊郎が語る「​起きると眠る」話も、まどろみながら体験させてもらいました。コロナ禍でもできること、まだまだあるんだと気づかされた。

ついでに宣伝がて、絡めて記しておくと、TOPPING EASTの清宮陵一代表も振り返り鼎談に登場する、「隅田川 森羅万象 墨に夢(すみゆめ )」5年間の活動をコンパクトにまとめた報告書が数日前に公開された。ノマドプロダクションで編集をお手伝いさせていただいたもの。

これからも続いていく?すみゆめの活動や特徴を伝えることはもちろん、背景となった地域の文化芸術活動のあゆみやそれらを支える拠点について少ないページながらにまとめている。

ちょうどアートプロジェクトの10年本も制作を進めるなかで「墨東まち見世」についても振り返っている時期なのだが、墨田の活動は更新されつつもリレーしていっているのが本当に面白い。どこでもできることではない。

といったわけでオリパラそのものについてとやかく言うつもりはないが、パラ開会式も含めて文化プログラム的なものがただのお祭り騒ぎで終わらず、これまで地に足をつけて取り組んできた人たちがしっかりと成果を出せる場にもなっていた。数は少ないかもしれないけど、それを実感することができた夏になって、よかったと思う。

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