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#66 フーチークーチーガール
派遣社員だった小桜韻子さんの契約期間満了に伴って、ハシビロコウの勤め先に、次の人が来た。
端座・フチ子、という名前がタイムカードに書いてあった。
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ハシビロコウは歓迎の意を込めて、近所に出来たばかりのアメリカンダイナーにお誘いし、おもてなしのつもりで社内の人間同士のウワサ話についてある事ない事まくしたてる。
手っ取り早く仲良くなるためのいつもの手。
この手の盛り上がり、嫌いな女子は居ない。
キマリのコースサ。。。。。。。。。。。
「そーゆーの、やめた方がイイ」
大抵の新任派遣社員は面白がって聞いてくれる、身近な同僚の、ワイドショー的な下世話なエピソードのフルコース。いわゆる鉄板、すべらない話。
はじめて拒絶され、ハシビロコウはうろたえた。
と同時に、その凛とした瞳とピンとした背筋とちゃんとした言葉遣いにすっかり恋しちゃった。
帰り道、のどに居座るコーラの甘ったるい残りカスをクラッタリングでかき消すフリして抑えきれないニヤニヤもごまかさんとするハシビロコウ。
ただ、フチ子さんなだけに、仕事や会社に対しては単なる腰掛けのつもりなんだろうな、って思うとやるせない気もするのであった。
…to be continued
ハシビロコウバンド物語
「第六十六話 フーチークーチーガール」
初出 2021.10.11