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新しいドライヤーが届いた。

今日、新しいドライヤーが届いた。

昨日まで使っていたドライヤーは、3年ほど前、初めて一人暮らしをするときに買ったものだ。

社会人になると同時に始めた一人暮らしは、米粒ほどの貯金もなくて、ありとあらゆる予算を削ってのスタートだった。実家から持っていけるだけのものを持っていき、友人や先輩からもらえるだけのものをもらった。だけどドライヤーだけは、「実家にあるのはお母さんが使うから持って行っちゃだめだよ~」と母に優しくしっかり先手を打たれ、仕方なく自分で買うことになった。(当たり前)

「良いドライヤーを使うと髪質変わるよ」的な高いドライヤー神話はこれまでの人生で幾度となく耳にしてきたけれど、長年「ドライヤーなんて髪が乾けばなんでも同じだろ」派閥に所属していた私は、ショッピングモールの一角で閉店セールを行っていたお店で、半額とか何とかで2000円そこそこのドライヤーを購入した。

唯一こだわったことといえば、静音であるかどうかということくらいだ。(一人暮らしのアパートの壁はびっくりするほど薄かった)

そんなやっつけで買ったドライヤーは、髪が乾くまでなかなかに時間を有する。私の髪は肩につかないくらいの短さなのに、毎日15分くらいを費やしていた。

生涯で髪を乾かしている時間を合計したら何年分になるんだろう。
2000円のドライヤーを使い続けて3年が経つ頃には、そんな悟りの境地にたどり着いていた。そしてその境地の向こう側で、気付いた。新しいドライヤー、買ったら良いんじゃない?

今でも決して裕福な暮らしではないけれど、社会人生活も3年目になり、実家を飛び出したばかりのあの頃よりは幾分か生活に余裕がある。1万円を超える買い物なんて滅多にすることがないからなんとなく罪悪感のような気持ちが沸いてくるけれど、きっとこれは、私の生活を豊かにするために必要な選択だ。そう思って、ネット通販で14,800円のドライヤーを購入した。

そして、話は冒頭に戻る。

いつもと同じようにコンセントに電源プラグを差して、いつもと違うドライヤーのスイッチを入れる。風が、私の髪をなびかせる。そして、思った。

あぁ、私、新しいドライヤーを買ったんだ。

正確には、買えたんだという方が正しいかもしれない。昨日まで2年10ヶ月浴び続けた風とは明らかに違う。なんとかイオン的なものが含まれていそうな、柔らかく質の良い風に包まれている感覚が確かにあった。

あっという間というほどではなかったけれど、いつもよりはるかに早く乾いた髪。それによって浮いた時間で、私は今、この文章を書いている。

私はなんて有意義なお金の使い方をしたのだろうと、柔らかく乾いた髪を耳にかけながら、自分の選択を誇らしく思う。この1年は、ちょっと良いドライヤーを買うように、自分が生きやすい生活を作るために時間やお金を使っていこう。そんなことを思った、1月11日のなんでもない夜の話。

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