はしもとのはしやすめ。

ライターが仕事の合間に書いた、なんでもない言葉たち

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最近の記事

しじみのおしる

九月、一緒に暮らしているパートナーが旅に出た。 彼は神奈川生まれ神奈川育ちのフィリピン人で、人生で合計1ヶ月も滞在したことがないフィリピンのことは、あまりよく知らないという。 そんな「知らないふるさと」を浴びに、彼は1ヶ月フィリピンに滞在する。 その間、私は日本で留守番だ。 二人暮らしを始めて四ヶ月。 制作と、仕事と、ニューヤンキーノタムロバと、パートナーと二人で生活をすること。八月はこの四つのバランスがうまくとれずに苦しかった。 だからそのなかの1ピースである「パー

    • 好きな人の緊急連絡先になった

      パートナーと2人でシェアハウスの一室を借り、生活を共にし始めてすぐの頃、彼はある撮影の仕事で2泊3日家を空けることになった。 新しい生活を始めたばかりの私は、「自分が家族ではない他人と共に暮らしている」実感が持てず、なんだかおとぎの国にでも迷い込んでしまったかのようなふわふわとした感覚で日々を過ごしていた。 彼が家を空ける一週間ほど前だっただろうか。お風呂に入る準備をしている私に、彼が言った。 「今度の撮影で緊急連絡先を提出しないといけないんだけど、あなたの名前と連絡先

      • 新しいドライヤーが届いた。

        今日、新しいドライヤーが届いた。 昨日まで使っていたドライヤーは、3年ほど前、初めて一人暮らしをするときに買ったものだ。 社会人になると同時に始めた一人暮らしは、米粒ほどの貯金もなくて、ありとあらゆる予算を削ってのスタートだった。実家から持っていけるだけのものを持っていき、友人や先輩からもらえるだけのものをもらった。だけどドライヤーだけは、「実家にあるのはお母さんが使うから持って行っちゃだめだよ~」と母に優しくしっかり先手を打たれ、仕方なく自分で買うことになった。(当たり

        • ニューヤンキーになったワケ

          私は横浜にある一風変わったシェアハウス「ニューヤンキーノタムロバ」に住んでいる。「入居者のクリエイティブ最大化」をコンセプトに据えており、入居できるのは1年限定。何月に入居しても、翌年の3月には全員で退去しなければならないというおもしろいルールがある。 この1年というのがミソで、限られた時間のなかで全力で人生を好転させたいと願う人たちが集まってくる。例に漏れず、私もその一人だ。 そんな一風変わったこのシェアハウスは、選考を突破したメンバーだけが入居することができる。選考は

          「取り引き先のシェアハウス」が「私の家」になった話

          私が初めてニューヤンキーノタムロバを訪れたのは、今から2年前。2022年春のことだった。 ニューヤンキーノタムロバことタムロバは、長年お仕事をご一緒させていただいているYADOKARI株式会社が運営を始めたシェアハウスで、私はYADOKARIの代表2人、ビルオーナーである泰有社の伊藤さん、1期生として暮らし始めたばかりの中谷優希さんとダバンテスさん5人のインタビュー取材を行った。 あれから2年が経ち、「取引先が運営するシェアハウス」は「私の家」になった。 「取材先」とし

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