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心に苔が生えてしまった
八ヶ岳を中心に、自然の風景を求めて歩き回っています。
特に心惹かれるのが、渓流、山野草、そして苔。
普段の生活の中でも自然を味わいたいと思い、山野草の寄せ植えなどを眺めていました。今はまだシーズンではありませんが。
ある冬の日、銀座の「野の花 司」というお店を散歩していると、ドアの近くに松ぼっくりを飾っていることに気が付きました。松ぼっくりの隙間から、きれいに苔が生えそろっているのです。
なんだこれは。初めて見るものですが、強く心を揺さぶられました。
調べてみると、「苔ぼっくり」と言うのですね。
自分でも作ってみたくなり、トライしてみました。
材料を揃える
八ヶ岳の家の庭にもハイゴケとコツボゴケはたくさん生えているのですが、冬場は乾燥したり雪の下に埋もれたりで、元気がありません。
コケリウムの流行を受けて東京都内にも苔の専門店がいくつかありますが、そこで苔を購入すると小さなサイズでもナカナカのお値段がします。
メルカリを覗いてみると、良心的な価格で苔を販売しているところがあるので、パックに入った苔の詰め合わせを買ってみました。
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これ以外に、ホームセンターで園芸用の水苔を買いました。乾燥していますが、水につけて一晩放置すれば元に戻ります。
水苔を巻いてから、生やしたい苔を植える
苔の美しさを保つには水分保持が大事なので、先に水苔を巻きます。
松ぼっくりは、乾燥しているとカサが開いて隙間が大きいですが、湿ってくるとカサが閉じて小さくなります。
カサが大きなうちに、どんどんと水苔を巻いて詰め込んでいきます。
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水苔がある程度巻ければ、今度は緑の苔を植えていきます。
まずは、ヤマゴケ。
ヤマゴケというのは通称というか総称なので、正確に言うとアラハシラガゴケだと思うのですが、ホソバオキナゴケなのかもしれません。苔の名前は勉強中ですが、実物を見るのを繰り返さないと区別が難しいですね。
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詰め方は適当ですが、意外に難しいものですね。
頑張りすぎると、ヤマゴケが水苔の中に埋もれてしまいます。適度に緑の葉が見えるように、そして抜け落ちないように工夫しながら挿していきます。
吸水させると松ぼっくりのカサが閉じるので、ある程度適当に入れてもなんとかなるでしょう。
シノブを植えた苔ぼっくり
もう1つ、苔だけでなく、他の植物も併せてみます。
メルカリで買った苔パックにシノブ(シダ植物)がついていたので、これも苔ぼっくりに植えてみましょう。
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シノブの葉は既に大きく育ちすぎているので、いったんカットして新芽が出ることを期待します。
詰め方は、相変わらず適当です。
水苔を軽く松ぼっくりに巻き付け、シノブの根を絡めて、さらに水苔を巻きつけます。
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水苔が撒き終わったら、オモテに見せる苔を植えます。
今度は、シノブゴケにしてみました。
葉先が細かく枝分かれして、繊細で美しい苔です。
ヤマゴケより長いので、植えるというより巻き付けるという形で固定していきます。どうしても余った部分が飛び出てきますが、これは最後にはさみでカットすることにします。
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ところで、「シノブ」と名前がつく植物、本当にややこしいんです。
代表的なところで、こんな感じ
① シノブゴケ :苔
② コケシノブ :シダ
③ トキワシノブ :シダ
④ シノブ :シダ
今回は、④を頂上に植え、①を全体的に巻き付けたということです。
吸水させる
苔を全て植え終われば、あとは水の中に入れて吸水させます。
10分ほど吸水させれば、松ぼっくりのカサはあっという間に閉じてしまいます。
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松ぼっくりをそのまま水中に放り込むと、頭の部分が沈んで上下逆さまになります。
吸水させるだけなので特に問題はないのですが、苔が抜け落ちてしまうのもイヤなので、卵パックを利用して向きを固定しています。
松ぼっくりを収納するには、卵パックがぴったりですね。
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気に入ったので、たくさん作った
慣れてくると、なかなか楽しいものです。
苔がたくさん余っていたので、さらに10個ほど作りました。
こんなに作って、どうしよう。
何も考えていませんが、とりあえず水を切らさないようにメンテしながら、この苔ぼっくりを育て続けています。
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苔を巻いた段階では、まだ人工的な感じがします。
これをゆっくり育てて、伸びすぎたところはカットして、全体的に自然な感じできれいに生えそろえば、とりあえずの完成形になります。
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心に苔が生えてきた
こういう苔遊びに夢中になっている父親を見て、息子は「頭に苔が生えてるね」とナイスな表現を見つけていました。
頭というより、心というべきですかね。
苔が生えるという言葉は、面白いんです。
良い意味と悪い意味、両方に用いられます。
A rolling stone gathers no moss.
直訳すると、「転石 苔むさず」。
イギリス英語とアメリカ英語で、この言葉は反対の意味になると言われています。
イギリス:転職ばかりしている人は信頼できない(長い年月が重要)
アメリカ:活発に動き回らないと苔むしてしまう(短い変化が重要)
日本では君が代に「苔のむすまで」とあるように、長い年月をかけて大成することを重視する雰囲気があるので、イギリスに近いですよね。
私は苔の魅力に引き寄せられ、文字通り心に苔が生えつつあります。
すぐに飽きる趣味ではなく、長く興味を持ち続けられるものになればいいなあと願っています。
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