Webマーケティングの成果を上げる「想像体験」の方法
たまには本職の話を。
Webマーケティングで成果を出すには「資源配分×シナリオ」、特に「いかに太くて強くて効率のよいシナリオを発見できるか」が成果を決める。
「太いシナリオを強くする」パターンが筋がよいことが多くて、シナリオを強くするためには「デザイン思考」の方法論が参考になることが多いよ、という話。(あとで有料にするかも。)
資源配分は、「予算や人員、時間をどう配分するのか」
資源配分は、その文字の通り、限られた資源をどう配分するか。いわゆる「最適化」機械が得意なやつ。
リスティング広告の運用で例えると、予算100万円で、うち50万円をCPA5000円のキーワード、のこりの50万円をCPA20,000円に投下していて、全体の獲得件数は125件という状態だったとする。その予算配分をCPA5000円のキーワードに100%振り切れば、計算上は、全体の獲得件数は200件になる。これが、資源配分で成果を出す、ということ(実際には投下金額が増えるとCPAは逓減していくんだけど、一旦無視。)
上級編としては、資源を調達することで制約を取っ払う、という手法もあったりすることも覚えておきたい。
シナリオは、「資源配分の対象となるコミュニケーションの単位」
シナリオは、資源配分の対象となるコミュニケーションの単位で、ビジネス側が期待するゴールに、ユーザーが到達するためのコミュニケーションルート。
(暫定的にここでは「シナリオ」と呼んでいるけど、もう少し、いい名称があるのかもしれない。)
リスティング広告で例えれば、あるキーワードで検索して、表示された広告文をクリックして、ランディングページに遷移して、フォームに遷移して、資料請求するまでのコミュニケーションのパターン。
シナリオには、強さと太さと効率の良さがあって。
UU数が大きければ大きいほど、それは太いシナリオ、ということになるし、CVRが高ければ強いシナリオになる、そのシナリオを実現するために必要なコストが小さければ小さいほど、効率がよい、ということになる。
強くて太くて効率がよいのが一番いいシナリオ。
「太くて強くて効率の良いシナリオを発見できるか」が、成果を出せるかどうかのカギ
で、資源配分とシナリオ、両方大事なんだけど、資源配分の最適化は、比較的簡単なので、差がつくのはシナリオ。
結局のところ、強くて効率の良いシナリオを発見することが、成果を出せるかどうかのカギになる。
Webマーケティングで成果を改善する、というプロジェクトに投入されたら、基本的には、この「太くて、強くて、効率の良い」シナリオをいかに見つけてくるか、ということを考える。
まず検討べきは「太いシナリオを強くする」こと
太い、強い、効率良い、この3つの変数のうち、改善が難しいのが「太さ」になる。「太さ」というのはユーザー数になるので、改善するには、単純にコストを投下することになる。
なので、太いシナリオを強くできると、大きな追加コストをかけずに、成果が出せるので、まずはここから入ることが多い。(もちろんケース・バイ・ケース)
デザイン思考で太いシナリオを強くする
この「太いシナリオを強くする」ということを考える時に役に立つのがデザイン思考の考え方。
で、ようやく、今週の本の紹介になるんだけど、この「行為のデザイン」の本に書いてある方法論が参考になる(このnoteは毎週、一冊本を紹介してその本をテーマに語るという形式でやっております。)
ユーザーが滑らかに目的の行為を進められるデザインがよいデザイン
まず、そもそも「行為のデザイン」とは何か?
「行為のデザイン」とは、人の行動に着目し、改善点を見つけてより良く、美しくしていこうとする手法です。ユーザーが滑らかに目的の行為を進められるデザインを「良いデザイン」と定義し、最終目標とします。
「人の行動」に着目して、「目的の行為を滑らかに」進められること。
「行為のデザイン」という手法が身につけば、自分を取り巻く人やモノ、情報が今までと違って見えてくるはずです。なぜなら、人のすべての行為には理由があり、その相関関係を自ら発見できるようになるからです。たとえば、「美しい徳利のデザイン」ではなく「美しい注ぎ方をデザインする」という発想の転換ができるようになれば、さまざまなシーンで新しい見方を提供し、日常がまったく違って見えてきます。モノだけを注視するのではなく、モノや自分や環境すべてのインタラクション(作用と影響) を俯瞰できるのです。
Webやアプリはインタラクションのかたまり。人の行為に着目して、インタラクションを俯瞰できると、改善点が浮かび上がってくるようになります。
観察や分析よりも「想像力」
で、この本のアプローチで一番おもしろいな、と思ったのはここ。
「行為のデザイン」では観察や分析よりも重視していることがあります。 それは人の想像力です。
デザイン思考というと、行動観察とプロトタイピング、が鉄板の手法で、そこをデータ分析でサポートしていく、という理解だったのですが、この本が提唱する「行為のデザイン」では、想像力を重視すると。
想像体験とは他の誰かになること
具体的には、「想像体験」という方法論が紹介されていて。想像体験とは、人・時空・目的という条件を設定し、全く異なる他人になりきって疑似体験をする、というもの。
ワークショップで行うことで、コミュニケーションを活性化する、という目的が半分以上だと思うので、そのままクライアントに出すアウトプットにしちゃダメなんだけど、仮説づくりには十分使えると思う。
「想像体験」を通じて、エフェクトとバグを見つける
想像体験のポイントは、時間軸に沿って、バグとエフェクトをみつけること。
想像体験をすると、時間軸に沿ってユーザーがどんな行動をとるか、どんなインターフェイスが存在するかが見えてきます。そして同時に「使いにくい」「わかりにくい」という心理や、行為を止めてしまう「バグ」が見つかります。(中略)「ここが楽しい」「ここが便利」という良いポイント、いわゆる「エフェクト」も見つかります。
デザインでは「バグ」を解決し、「エフェクト」を生かすようにすればよいのです。
特に、すでにあるシナリオの場合には、ゴールに到達した(であろう)ユーザーの追体験をするつもりで想像体験してみると、筋のいい仮説がみつかる傾向です。
特にモチベーションが上がったポイントや意思決定につながる「エフェクト」がぼんやりとでも特定できると、施策につながります。
コツは、「人」「時空」「目的」のうち、まずは、「人」を自分自身に設定した上で、想像可能な範囲の「時空」「目的」で、想像体験を通じて、バグとエフェクトを洗い出した上で、ゴールに到達したであろうユーザーの「人」「時空」「目的」、とくに人の要素を仮説立てて、追体験する感じでやるといろいろ見えてくると個人的には思っていたり。
ちなみに、Webマーケティングで成果を出すための考え方については、以前も触れたことがあるので、併せて読んでいただけると理解が進むかも。
本書では、この他にも、「想像体験のためのストック」や「バグの種類と解決方法」などの知識や実際の「行為のデザインのワークショップの具体的な手順」など、取り入れるとよさそうな参考情報が結構たくさんありました。
結局のところ「相手の立場になって考えよう」ができれば、なんでもできる
「行為のデザインの方法論としての想像体験」って、結局の所、相手の立場になって考えよう、ってことでしかなくって、
この「相手の立場になって考えましょう」という、幼稚園で教わるような人間としての基本が、Webマーケティングのみならず、マーケティング、コミュニケーション、マネジメント、すべてにおける極意なのかもしれないなと。
「相手の立場になって考えましょう」、口で言うのは簡単だけど、よく考えると、めちゃくちゃ難しい。
※今回は、5月12日(日)~5月18日(土)分の週報になります。