白鸚さんから届いた希望の手紙
家に帰ったら、松本白鸚さんから、封書が届いていた。
なんだろうと思い、封を切ると、「お禮のことば」と題した文章と絵が見開きに収められていた。
『ラマンチャの男』の千穐楽は、二月の二十八日の予定だった。この初演から五三年、思い出深いこの演目のファイナルを記念して、白鸚さんは、この挨拶状をずいぶん前から準備されていたのだろう。
「振り返ると、喜び、悲しみ、苦しみ、すべてが感じられ、ファイナルの日を迎えられましたことは胸が一杯の思いです」
とある。切々と感謝の気持ちを白鸚さんはこの挨拶状に綴っている。
封筒のなかには、白い短冊が挟み込まれてあった。
千穐楽まで上演できなかったことに対して、観劇を楽しみにしていたお客へのお詫びが綴られてあった。
無念なのは、だれよりも白鸚さん自身なのは間違いない。それにもかかわらず「ご迷惑をおかけした事、私より心からお詫び申し上げます」と書かなければならなかった心情が胸に迫った。
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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。