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凡そ人間には意志によって生きる人と、感情に頼って生きる人とがある。(久保田万太郎、あるいは悪漢の涙 第二十八回)

第七章 水上瀧太郎

 ひとは親友をいかにして選ぶのだろうか。
 その選び方によって、その人間の本来持っている性行があらわになる。
 耳にざわりのいいことばかりいってくれる取り巻きは、実はその人物をひどく退屈させたりもする。
 苦言や非難をあびせかけてくる友人をむしろ好む人物もいる。彼らは友人の真摯な批判を、じぶんに対する愛情の深さとして理解するのである。

 至極大ざっぱな言葉使いではあるが、若し、凡そ人間には意志によって生きる人と、感情に頼って生きる人とがあると云えるならば、久保田君は後者の代表的人物である。殆ど意志を所有しないと云ってもいい位、気持に執する人である。はっきり云えばむら気なのだ。喜ぶ、嬉しがる、気を悪くする、怒る-----毎日のお天気よりも、もっとうつろい易い心持に頼ったり頼り兼たりして暮らしている詩人である。従而(したがって)、その戯曲が、所謂気分劇である事は当然の結果であろう。
(瀧太郎「『雪』を見る前後の感想」)


 万太郎にとって水上瀧太郎は、厳しい批判者であるとともに、圧倒的な擁護者でもあった。
 瀧太郎の痛烈な言葉は、周囲を驚かせたが、万太郎には意外にこころよく響いていたのではなかったか。

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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。