【劇評240】松緑の強い意欲が突出する『太刀盗人』
十月大歌舞伎、全体の狂言立てに苦心が見られる。長く三部制が続くと企画もこなれてくる。一方で、時間の制約によって、狂言が限定され、そろそろ新鮮味を出すのが苦しくなっている。
さて、第二部は、白鸚が『時平の七笑』(今井豊茂補綴)を出した。
近年は、ほとんど我當の出し物になっているが、成功例を見たことがない。それは、並木五瓶の作に限界があるからで、時平が表面的な仮面を脱ぎ捨て、悪の正体を見せる結果、長く続く笑いを聞かせる趣向自体に無理がある。笑いに時平の内心を見せるのではなく、単に笑いの切っ先や大きさを見せるだけの芝居となってしまう。
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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。