芥川龍之介、売文に拍車がかかる最後の日々。(久保田万太郎、あるいは悪漢の涙 第四十三回)
昭和二年、一月四日、芥川龍之介の姉ヒサの嫁ぎ先、西川豊の芝区南佐久間町の家が失火。
西川は保険金目当ての放火ではないかとの嫌疑を受け自殺した。
龍之介には、妻とふたりの子供があった。養子でありながら長男として、養父母と叔母、ヒサの子をあずかり、八人の扶養家族を養わなければならなかった。
西川の死によってさらに三人の家族が増えた。故人は年三割の利息がつく借金まで残した。
売文生活に拍車がかかる。
精神の病をかかえながらも、文を書き続けなければならない。
三月は「改造」の小説「河童」を含む九本、四月はやはり「改造」で谷崎潤一郎との間に文学論争を起こした「文藝的な、餘りに文藝的な」を含む十本の原稿をかかえている。
万太郎は、家族に押しつぶされる芥川の最期の日々を身近に見つめていた。
芥川は時代の寵児であった。
第四次「新思潮」に発表した「鼻」で漱石に激賞されて出発。古典的な題材を知的な構成で小説によみがえらせた初期の作品は、鴎外の血脈を継ぐ。
年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。