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【劇評291】無視されることの残酷。ほろびての細川洋平が、トップランナーの覚悟を見せた。


 無視することの暴力、そして無視されることの残酷。

 ほろびての新作『あでな//いある』(細川洋平作・演出)は、社会にはびこる暴力に真っ向から向かい合った秀作となった。

 装置は、背景に壊れかけた塀があるだけ。裸舞台に美容室の椅子とワゴン、上手には机と椅子三脚があるだけだけれども、細川の手際のよいステージングで時間と空間を大胆に再構成している。

 美容師(伊東紗保)が、客(内田健司)の背後にたって、長いおしゃべりを続けている。美容院の近所にある塀にバンクシーの絵が描かれていたこと。美容師は写真が趣味で、街角で見知らぬ人に声をかけて、ポートレートを撮っていること。
 他愛ない話が続くけれども、客は三年のあいだ引きこもり生活を送っていたあたりから、ふたりの関係が微妙に変わる。そして髪を短くしたい理由が、「軍」に入るためだとわかった瞬間、劇場は凍り付く。

 アーティストのバンクシーが、ウクライナの首都キーウ近郊の破壊された壁に、昨年の十一月、七点の作品が制作された報道が思い出される。これまでの会話は、写真による可視化が、現在の世界をめぐる主題なのかと、衝撃を受ける。

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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。