蜷川幸雄の世界観はコロスにある。
蜷川幸雄は何を考えていたのだろう。
人間は危機的な状況にある。それは、人類の誕生から始まったことで、現在に至っている。未来もまた、この状況は続くだろう。
これは蜷川の世界観であり、蜷川の舞台を撮り続けてきた細野晋司にも引き継がれたように思われる。
細野の近作『PASSION』には、蜷川がもっとも輝かしい中期の時代、渋谷のシアターコクーン芸術監督だった頃の舞台写真が収められている。
ここにあるのはポートレートではない。
まぎれもなく、蜷川幸雄演出の舞台写真である。
けれど凡庸な舞台写真とも、この写真集は隔たっている。細野の写真を作品として自立させたいという意思がある。それは、舞台批評が現実の舞台に対する態度に似ている。
私たち批評家は、舞台に接して批評を書く。舞台がなければ、批評はない。舞台写真を撮る写真家も同じような立場に置かれている。舞台がなければ、舞台写真はない。
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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。