インバウンド歌舞伎へ。十一月歌舞伎座を観て。
十一月の歌舞伎座は、舞台機構の点検、更新のために、変則的な公演となった。
「ようこそ歌舞伎座へ」と題して、シンプルで観光客誘致を強く意識した狂言立てである。
まずは、虎之介の案内による「ようこそ歌舞伎座へ」。続いて左近のお嬢、歌昇のお坊、坂東亀蔵の和尚による『三人吉三』、そして、松緑を筆頭の獅子の精とする『石橋』。萬太郎、種之助、中村福之助、虎之介が揃って加わる。
それぞれ四十分、三十一分、二十一分だから、きわめて簡便。国立劇場の鑑賞教室では、もうすこし核となる演目を続けてきたから、それよりも軽い入門編と考えてよいと思う。
実際の客席は、半数まではいかないが、海外からの観光客の姿が数多く見えた。気の張らない観劇を、ときにはアルコールを手にして楽しむ光景だった。いわゆる鑑賞ではなく、娯楽のための観劇である。
歌舞伎座もこうした観客層を意識して、「歌舞伎印巡」と題したスタンプラリーの冊子を配り、二階のロビーには、「石橋」の顔ハメパネルを用意し、『三人吉三』のお坊が登場する駕籠を公開していた。
ドイツ系と思われる老齢の婦人が、顔ハメパネルを楽しんでいる情景をほほえましく思った。
年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。