『昭和の映画絵看板 看板絵師たちのアートワーク』。精魂を込めた絵師、絵描きの情熱。
絵看板という言葉には、独特の魅力がある。
江戸時代のように宣伝媒体が限られていた時代は、劇場や演芸場の前に、掲げられた庵看板が大きな役割を果たした。
歌舞伎の場合は、どんな演目が演じられるかも、もちろん重要だけれども、誰が出演しているかが最重要である。
師走、京都・南座、顔見世興行の庵看板が掲げられると、季節のニュースで今も報道される。江戸時代から今までかわらず、役者の名前によって、観客はどんな顔合わせの狂言が観られるか、歌舞伎の贔屓は期待に胸をふくらませたのだろう。
岡田秀則監修、貴田奈津子企画による『昭和の映画絵看板 看板絵師たちのアートワーク』(トゥーヴァージンズ)を手に取って、映画というメディアもまた、スタアによって支えられたメディアだったと改めて思った。
江戸時代の歌舞伎と違うのは、スタアがどんな役を演じてるか、それをいかにリアルに伝えるかが大きな宣伝の目的だった。
本書に収められたのは、戦後、大阪の映画館の劇場前を彩って、観客を呼び込んだ絵看板の記録である。企画の貴田が、この時代に看板絵師の会社を創業していた不二夫の血縁であり、不二夫とその長男で二代目の明良が撮影、保管していたネガフィルムが偶然、発見されたことから、一冊にまとまった経緯がある。
通して写真を見ていくと、感慨深いものがあった。
ひとつには、この宣伝媒体に精魂を込めた絵師、絵描きの情熱である。もとより、映画を観てもらうために描かれた看板は、お客を惹きつける工夫に満ちあふれている。いかにスタアに似ているかが重要であり、絵ばかりではなく、文字(タイポグラフィ)がいかに重要であったかが伝わってくる。恐るべき迫力に圧倒された。
年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。