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長谷部浩
2024年12月29日 16:36
声は情感にふるえ、身体が絶望を物語る。『見知らぬ女の手紙』(シュテファン・ツヴァイク原作 池田信雄翻訳 行定勲翻案・演出)は、官能のありかを探る秀作となった。篠原涼子の声が劇場いっぱいに満たされ、首藤康之の身体が暗闇に沈潜していく。私は、九十分のあいだ、性愛について考え、自らを探った。 ルートヴィッヒ・フォン・ベートーベンのピアノソナタ第十四番「月光」の冒頭が繰りかえされる。長い演奏旅行