松岡和子の人生に迫る『逃げても、逃げてもシェイクスピア』
二○二一年五月、松岡和子は、『終わりよければすべてよし』を筑摩書房から刊行し、シェイクスピア戯曲三十七作品の個人訳をなしとげた。松岡は単に書斎の人ではない。稽古場に連日のように通い詰め、演出家や俳優とディスカッションしながら訳業を仕上げていく。まさしく演劇現場の人であった。
草生亜紀子による『逃げても、逃げてもシェイクスピア 翻訳家・松岡和子の仕事』(新潮社)は、この困難な訳業とともにある彼女の人生を詳しく取材している。
今回、明らかになったのは、幼い頃過ごした満州国