【劇評294】仁左衛門の水右衛門に、悪の真髄を見た。
「一世一代」とは、その演目をもう二度と演じない覚悟を示す。役者にとって重い言葉である。
仁左衛門はこれまで、『女殺油地獄』、『絵本合法衢(えほんがっぽうがつじ)』、『義経千本桜』「渡海屋・大物浦」を、一世一代として演じてきたが、二月の大歌舞伎では、自らが育ててきた演目『通し狂言 霊験亀山鉾—亀山の仇討—』もその列に加わった。
もちろん淋しさはつのるけれども、筋書によれば「この狂言は、長い間私以外演じられていない狂言で、私もまだまだ演じたいのですが、”仁左衛門も歳を取