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長谷部浩のノート お芝居と劇評とその周辺

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2022年11月の記事一覧

【劇評285】新しい時代をはじめるには、町をまっさらにするしかないのか。うさぎストライプ『かがやく都市』の深い思い。

 うさぎストライプの『かがやく都市 The Radiant City』(作・演出 大池容子)は、謎めいた世界に観客を誘い、魅惑にあふれている。  高校の教室、選択授業の「都市計画」で、学生服姿の松崎(宝保里実)と佐々木華(安藤歩)が、教師の石野(伊藤毅)を待ちながら、心理テストやなぞなぞで時間を潰している。  石野はかつてこの町に、モニュメントなどがなにもない広場を設計したことがある。華の兄、佐々木譲(亀山浩史)は、高校で同級生だったが、今はひとりで工場を運営している。そこ

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【劇評284】技藝を追求する團十郎の弁慶。『勧進帳』で幸四郎と猿之助が襲名を盛り上げる。

気力体力が充実したところに、未来を見据えた技藝が宿る。  さて、『勧進帳』である。  新・團十郎の弁慶、幸四郎の富樫、猿之助の義経。意外なことにこの顔合わせは、はじめてである。

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【劇評283】唯一の救いとなる夫婦の絆。俳優座『猫、獅子になる』を観た。

 出口のない現実について考えた。  横山拓也作、眞鍋卓嗣演出『猫、獅子になる』は、八〇代の親が、五〇代の子供の面倒をみる「八○五○問題」に迫っている。所属の俳優に幅のある俳優座ならではの舞台になった。  老齢になって買い物もままならなくなった蒲田妙子(岩崎加根子)から、次女の岬野明美(安藤みどり)のところに手伝いに来て欲しいと電話がかかる。母妙子は、夫亡き後、自室に閉じこもったまま五〇代にさしかかった長女蒲田美夜子(清水直子)の面倒を見続けている。  早くに結婚して家を

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【劇評282】團十郎襲名の『助六由縁江戸桜』。成熟か、それとも野性か。

 成熟を取るか、野性を取るか。  もちろん、二者選択ではないが、十三代目市川團十郎襲名披露の『助六所縁江戸桜』を見て、私の考えがすぐにはまとまらなかった。  今回の『助六所縁江戸桜』は、令和の歌舞伎界の役者をほぼ総動員した演目である。ただし、この芝居は、なにより助六役者の出来によって成否が決まる。  まずは「出端」である。  揚幕から出たときの姿が勝負であるが、私はめでたい襲名の團十郎の面差しに憂いを見た。花道の七三に進むが、下駄の音も低く抑えて、力感を放出するのを控えて

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【追悼】高都幸男と空中楼閣

 高都幸男さんが亡くなった。最後に会った日を忘れてしまうくらい音信がない。おそらくは、野田秀樹作・演出の「Q」初演のゲネプロもしくは初日だったから2019年の10月が最後だったろうと思う。  高都さんは、夢の遊眠社の初期から、長らく演出補の重責を担っていた。  本来の担当は、音響だったけれども、演出席には高都さんがいた。野田さんの初期作品は、今よりももっと、役者としての野田さんの比重が大きかったから、舞台を離れられない。全体を見る演出補がどうしても必要だったのだろう。

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