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長谷部浩のノート お芝居と劇評とその周辺

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2022年3月の記事一覧

菊之助の『春興鏡獅子』と『京鹿子娘道成寺』配信から見えてきた舞踊の魔

 菊之助が国立劇場とともに収録した映像「尾上菊之助の歌舞伎舞踊入門」を観た。  『春興鏡獅子』と『京鹿子娘道成寺』が、昨年八月に収録されたが、今回、配信されたのは、それぞれ解説編と本編、計四本となる。  まず、解説編だけれども、外の景色からすると、国立能楽堂で収録されたものだろうか。入門の名にふさわしく、舞踊の背景を丁寧に語っている。菊之助の語りだけではなく、舞踊のダイジェストもインポーズされているので、解説を聞きながら、なるほどと膝を打つ楽しみがある。  私たちは舞台の

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「尾上菊之助の歌舞伎舞踊入門」が、明日から配信される。

 尾上菊之助さんは、現在、歌舞伎舞踊の頂点に立つ一人ですが、国立劇場が独自に収録した『春興鏡獅子』と『京鹿子娘道成寺』が配信されることになりました。「尾上菊之助の歌舞伎舞踊入門」芝居が休みの月に、渾身の力をもって、後世に残すべく制作された映像です。  収録は、それぞれ昨年の八月四日と二十日に、国立劇場大劇場で行われました。  収録の日には、私も劇場で拝見しましたが、藤間勘祖さんの立ち会いのもと、ぴりぴりとした空気で、舞台は張り詰めていました。  『春興鏡獅子』は、小姓弥生の美

村井良大、spiによる『手紙』に、ミュージカルの可能性を読む。

 ミュージカルでは、再演は最高の勲章となる。トニー賞には、ベストリバイバル部門があるし、日本でも白鸚の『ラマンチャの男』は、一九六九年から再演を繰り返した。  とはいえ、ブロードウェイやウェストエンド発ではなく、日本オリジナルのミュージカルとなると、宝塚をのぞけば、再演を繰り返すのは、容易ではない。  東野圭吾原作、髙橋知伽子脚本・作詞、深沢桂子作曲・音楽監督・作詞、藤田俊太郎演出の『手紙』は、二○一六年の初演、一七年の再演に続いて、三演を果たしたのは画期的な出来事だ。し

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【劇評254】女方が揃った『輝虎配膳』。幸四郎、錦之助が役者の大きさを見せる『石川五右衛門』

 よい女方が三人揃わないと出せないのが、近松門左衛門の『輝虎配膳』。〝三婆〟のひとりで、毅然とした品位が求められる越路、琴の名手で敢然たる気風を見せるお勝、細やかな気づかいを見せる唐衣。  魁春の越路、お勝の雀右衛門、唐衣の孝太郎が、それぞれの持ち味を見せて、観客を飽きさせない。  信玄と輝虎の確執を主題に、戦国時代の女性を描いているが、それぞれが強い意志を持つ。この芝居に爽快感があるのは、男と男の対決ではなく、女性の果たしてきた大きな役割を鮮明にしているからだろう。  

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【劇評253】歌六に替わった『河内山』。菊五郎、時蔵の息があう『芝浜革財布』

 仁左衛門休演のため歌六に替わった『河内山』。さすがにまた、役者が河内山の身体に馴染んでいるとはいいがたいが、吉右衛門とも仁左衛門とも異なる味があって面白く見た。  この芝居は、「玄関先」の「ばかめえ」と言い捨てる爽快感ばかりが忠もされがちだ、歌六の河内山は、家老高木小左衛門(坂東亀蔵)と北村大膳(吉之丞)とのやりとりになって、自在になる。  ただし、眼目はやはり、一国の大名松江公(鴈治郎)と河内山が、裂帛の間合いで戦う「書院」にある。序幕の「上州屋」では、ぎこちなく見え

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【劇評252】正確な描画力にすぐれる菊之助の『盛綱陣屋』

 三月の国立劇場は、『近江源氏先陣館』を菊之助が出した。  「歌舞伎名作入門」と題したシリーズのひとつで、昨年の『馬盥』に続く。骨格の太い時代物を広く愉しんでもらうのが企画の方向だろう。今回も萬太郎による「入門 〝盛綱陣屋〟をたのしむ」があり、休憩を挟んで、丁寧に『盛綱陣屋』を舞台に掛けている。  菊之助の佐々木三郎兵衛盛綱は、初役。  近年は、立役が多く、しかも、『義経千本桜』の知盛のように、勇壮な英雄も演じている。  『馬盥』の光秀、『盛綱陣屋』は、いずれも陰影に富ん

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白鸚さんから届いた希望の手紙

 家に帰ったら、松本白鸚さんから、封書が届いていた。  なんだろうと思い、封を切ると、「お禮のことば」と題した文章と絵が見開きに収められていた。  『ラマンチャの男』の千穐楽は、二月の二十八日の予定だった。この初演から五三年、思い出深いこの演目のファイナルを記念して、白鸚さんは、この挨拶状をずいぶん前から準備されていたのだろう。 「振り返ると、喜び、悲しみ、苦しみ、すべてが感じられ、ファイナルの日を迎えられましたことは胸が一杯の思いです」 とある。切々と感謝の気持ちを

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