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長谷部浩のノート お芝居と劇評とその周辺

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2022年1月の記事一覧

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三月国立劇場。菊之助の『盛綱陣屋』は、丑之助が鷹揚たる小四郎を見せる。

 私信ではなくても、封書を開けるのは楽しい。愛用のペーパーナイフを使って、のり付けされたベロの部分に刃を入れる。何か、新しい情報にふれるときの儀式として、とても大切に思っている。  国立劇場から封書が届いた。  なんだろう。いつも案内が届く時期ではないのにと思って開いたら、三月歌舞伎公演の案内だった。一月の国立劇場公演筋書で、「演目=鋭意選定中。出演=尾上菊之助ほか」と予告されていた内容が決まったとの知らせだった。 「歌舞伎名作入門」と銘打たれたシリーズで、昨年は『馬盥

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菊之助の冒険、準備稿が完成しました。

 昨年のはじめから取材を重ねてきた『菊之助の冒険』ですが、ようやく準備稿が完成しました。菊之助さんによるまえがき、私のあとがきは、まだ書いていませんが、目次と本文は、ほぼ確定したことになります。  プリントアウトに再度目を通して、疑問点に付箋を付けて、著者の菊之助さんに加筆、訂正などをしていただき、より完成度のたかい状態で、入稿したいと思っています。  十代目三津五郎さんと同様の聞書きを作ったのは、二○○八年ですから、もう、十三年前のことになります。『坂東三津五郎 歌舞伎

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雑誌「演劇界」が休刊となる。その残酷に身がすくむ。

 雑誌「演劇界」の休刊が決まった。  頻繁に寄稿していた時期があるので、突然の報を聞いて、なにか取り戻しようもない決断が下されたと思う。  もちろん、中断していた時期があるとはいえ、一九○七年に創刊された「演藝画報」からの連続で考えると、その歴史は百年を超える。図書館の書庫に、「演藝画報」「演劇界」のバックナンバーがあるのは、歌舞伎についてものを書く人間の拠り所になっていた。今の勤務先に職を得たとき、いつでもこの圧倒的な資料群に、いつでもアクセスできるのだと思うと幸福感でい

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【劇評247】勘九郎、愛嬌に溺れぬ『一條大蔵譚』。

 勘三郎家にとって大切な『一條大蔵譚』。勘九郎は、父十八代目、祖父十七代目を受け継ぎつつも、自分なりの境地を開きつつある。  まずは「檜垣」。獅童の鬼次郎、七之助のお京が、檜垣茶屋で源氏の未来を憂えている。大蔵卿に使える計略を練るために、お京が女スパイのようになりがちだが、あくまで忠義本意に描く。舞が本格なので、筋目の通った人間であると説得力を持つ。  勘九郎の大蔵卿は、床几を傾けて、阿呆ぶりを強調するところも、あざとい笑いを避ける。品のよい育ちを守っている。お京をからか

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