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長谷部浩のノート お芝居と劇評とその周辺

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2021年4月の記事一覧

野田秀樹作・演出『パンドラの鐘』初演のときに書いた劇評「白い雲」。

 今回の熊林弘高演出の『パンドラの鐘』パンフレットに書いた原稿から、一部、抜粋し、ここに掲載します。  また、ご購入いただけた方は、評論「白い雲」の全文をダウンロードして頂けます。PDFファイルで16ページ。書籍ですと、ほぼその倍の分量になります。この評論には、『パンドラの鐘』だけではなく、野田秀樹と夢の遊眠社がどのような歩みをたどり、どのような演劇のスタイルを作ってきたかが、くわしく書かれています。  この戯曲の初演は、一九九九年、十一月六日に世田谷パブリックシアターで

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【劇評219】伊藤毅の『てくてくと』が迫真力をもって描く不安に満ちた世界。

 雨の夜、駒場アゴラ劇場で、やしゃごの『てくてくと』(作・演出 伊藤毅)を観た。

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五月大歌舞伎、「團菊祭」ではないが、菊之助の『春興鏡獅子』も華やかに、見どころのおおい公演となった。

 歌舞伎座から五月大歌舞伎の案内が届く。長年、「團菊祭」が行われていた月だけれど、今年は菊五郎劇団と吉右衛門中心の一座が、合同公演を行っている。そんな印象の役者が揃っている。  一方、海老蔵はどこに行ってしまったのか、気になる。調べてみると、明治座に立て籠もって無人の一座で、二日だけの興行が予定されている。実盛物語とKABUKUと題した新作歌舞伎舞踊を見せるのだという。  長く続いた團菊祭がこんなかたちで中断されてしまうのを惜しむ。このごろ公演に「海老蔵歌舞伎」のタイトル

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歌舞伎に未来はあるか、断崖にいる私たちについて考えたこと。

 大阪では、医療が緊迫している。東京も明日はどうなるか、わからない。  ロンドンやニューヨークの大劇場が、閉鎖を強いられているなかで、日本はかろうじて綱渡りのような公演を続けてきた。  感染者数や死者が、加速度的な上昇にまで至らなかったこともある。また、GO TO TRAVELや五輪との整合性を取るために、移動や大規模公演を認めざるを得なかった政府の方針もあるのだろう。  けれども、第四波が深刻化するにいたって、こうしたディールもまた、危険な水域に来たように思う。  

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【劇評218】南北、郡司学、仁左衛門、玉三郎、奇跡の巡り会い、ふたたび。

 歌舞伎では、一座を代表する女方を、畏敬もって立女方(たておやま ルビ)と呼ぶ。  六代目歌右衛門、七代目梅幸、四代目雀右衛門、七代目芝翫は、歌舞伎座の立女方にふさわしい威光を放っていた。玉三郎は、歌舞伎座のさよなら公演のあたりから、その名に、ふさわしい存在だと私は思っていた。  詳しい事情はわからないけれども、いつの間にか、特別舞踊公演などの独自の公演が増え、重い演目の役を勤める機会が少なくなっていった。歌舞伎の世界にとって、このような動向は、とても残念なことだと思って

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【劇評217】芝翫と菊之助と東蔵が、がっしと向かい合う時代物の真髄「太十」が見逃せない。

 「太十」と書いて、タイジュウと読む。  はじめ人間浄瑠璃として上演されたとき、『絵本太功記』の十段目「尼ヶ崎閑居の段』として上演されたところから、この俗称がついた。  ベートーベンでも「田園」「運命」「合唱付」などタイトルが付いている交響曲は、観客に愛される。  時代物の傑作で、歌舞伎の主立った役柄を網羅しているところから、「菊畑」「新薄雪物語」などと同様、何年かに一度は、上演していかなければならない。つまりは、役者から役者へ、その型、口伝など、伝承を絶やさないでいなけれ

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【劇評216】七十八歳の気力を振り絞る白鸚の弁慶。神秘性のこもる猿之助の『小鍛治』。

 七十八歳で、体力、気力ともに最大限の充実を求められる『勧進帳』の弁慶を勤める。これがどれほどの偉業であるかは、いうまでもない。祖父七代目松本幸四郎を仰ぎ見て、その藝境を継きたい強い意志があってのことだろう。  昭和三十三年に十六歳で勤めてから六十年を越えた。私がみてきたのは、この四十年に過ぎないが、弟吉右衛門と競うようにして、白鸚独自の弁慶像を造形してきた。  一一五一回目にあたる初日、白鸚の弁慶を観た。  現在の白鸚の澄み切った藝境がよくわかった。長男幸四郎の富樫と

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