十年前の三月、私は新浦安から東京へと逃れた。
十年前のことは、忘れられるはずもない。
浦安市の新浦安に住んでいた私は、深刻な被害を受けて、この街を去った。それがよかったのかどうかは、わからない。けれど、別の人生があのとき始まったのは確かだろうと思う。
しばらくは、ニューヨークの本社に呼び戻された友人のマンションに住まわせてもらった。このときは、トランクひとつで、新浦安を出たので、着る物も最小限だった。セーターを2枚にシャツを3枚。さすがに親しい友人から少し着る物を借りたが、て、心細い毎日で、クリーニング屋にも頻繁に